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【ヒロアカ】私たちには余裕がない。

第12章 疑惑中。


真紅に染まるその瞳は、まだまだ幼い子供みたいだった。···っていうのは、私だけの秘密。

「俺が浮気してよーが、別に構わねぇとか···
···俺に興味ねェみてぇな顔しやがって」

「···あれは···浮気してると思ったからで」

「もう二度と言うな」


ぐりぐりと肩口に額を押し付けられる。痛くないのかな。

大きな少年は、キスをせがむように顔を近づけてきた。

だけど私は、少し気恥ずかしくてその唇を指先で押し返してしまう。

「···なんのつもりだよ」

「···別に」

後頭部を手で押さえられる。

これはもう、『逃げるな』の合図だった。

観念して、手を退ける。

その瞬間、熱いマグマのような唇が、私のそれと重なった。


───ああ、こわい。


溺れていく感覚も、底の見えない心地よさも。

いつか消えるものなんじゃないかと、こわくなる。

重なった途端の、あの、熱が伝染していく感じ。

久しぶりのように思えた。

どんどん噛みつくように激しさを増すキスに、頭と視界がクラクラする。

逃げられない、し、逃げたくない。


あぁ、ダメだ。

胸が押し潰されそうなほど、熱い気持ちが込み上げる。

「っ──ちょ、」

「黙れや」

角ばった大きな暖かい手のひらが、服の中をまさぐる。

一つ一つ確かめるように、丁寧に触れていくのが、何とももどかしい。それに、いつもの勝己くんらしくなくて、何だか気恥ずかしい。


「···泣くな。鬱陶しいんだよ···」

「っ···、誰のせいだと、」


乱暴に目元を擦られ、頬に水滴が染みる。

唇に触れた涙は、少ししょっぱかった。


「···なぁ」

クラクラする頭に、勝己くんの声が響く。

毒みたいに体に染み渡っていくその声が、耳元で静かに響いた。


「···好きって言え」


「···っ···、ぁ···」

ときどき耳朶に触れる唇が熱い。

生理的な涙が頬を伝う。ぐっと目を瞑れば、暗闇の中で勝己くんの掠れた甘ったるい声が響いた。

痛い。心が痛い。

これ、幸せって呼ぶべきなのかな。

「‥‥なぁ‥‥」

好き。

多分、あなたが私に対して抱えている感情よりも大きい。

だけど、これを言うのは何だか悔しい。

勝己くんだって、好きだって言ってくれないじゃない。

私だって───、

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