第12章 疑惑中。
────prrrrr‥‥
「!」
‥‥電話? 私の?
「‥‥チッ···」
勝己くんの視線が超痛いし怖いけど、画面を確認する。
···え? お母さん?
「も、もしもし?」
『あらー、久しぶりねー、ちゃんと食べとー?』
「あぁ、まぁ、うん···」
それどころじゃないのよ、母さん。
こちらと電話越しの温度差がすごい。
すごく視線痛い。早く終われ感出てる。
「何か用?」
『んー、そこまでやないけど、ほら、この前の勝己くん!』
「ん?」
『雄英の子やったんやねぇ!』
···あ、そう言えば言ってなかったっけ?
ん? 言ってなかったっけ?
『あんた大丈夫なん? 勝ち組の中の勝ち組ボーイとやっていけるん?』
「はは···」
それ私が負け組だって言いたいんですかね。
何故こんなにも母はテンションが高いのか。
その理由は、次の言葉で判明した。
『お父さんがね! 来週いっぱいまで仕事休みなんやけど』
「あぁ···」
うちは円満夫婦だから···だからこんなに母は喜んでいるのだ。
『今度の休みにでも、うちに来てもらったら?』
「あー‥‥‥えぇ!?」
視界の端で勝己くんの肩が跳ねた。
え、でも、えぇ? なんで!?
「なんで!?」
『なんでて‥‥やっぱほら‥‥お父さんも会いたいって言うとるし‥‥あんたの部屋、三人は寝られへんやろ?』
「そうだけど‥‥」
でも‥‥。
ちらりと勝己くんを伺うと、怪訝な目でピクリとも動かずに私を見ていた。軽くホラーを越えていた。
『あ、平日でもええんよ? 空いてたら』
「平日なんて無理に決まってるでしょ? 学校あるし」
『あ、そやったな』
渋っていると、母は「どうしても来てほしい」と懇願してきた。父がどうしても会いたいらしい。
私としては別に構わないのだが、勝己くんがどう思うか‥‥
『面倒くさい』と言われたらそれまでだ。
「‥‥わかった。一応訊いてみる」
『お! 頼んだ!』
母の嬉しそうな声で、通話が終わった。
素早く携帯をマナーモードにしてクッションの下に挟み込む。
勝己くんに向き直ると、まるで道場で説教される直前のような気持ちになってきた。
でも、大事な用件だったし‥‥仕方ないことだからお願い怒らないで!!
と、内心ヒヤヒヤになっていると。