第12章 疑惑中。
────約束の第2土曜日。
朝から胸の動悸が収まらない。
今日は来ないかと思っていたが、勝己くんは約束通りうちへ来た。
「···久しぶり」
って感じでも無いけど。
ついこの前出会ってしまったし。
今はあんまり、勝己くんの顔を見たくない気分だし。
ガン無視を決め込んできた勝己くんに内心イラッとしながら、お茶を出した。
あー、なんだろう。なんか嫌だ。
緊張している自分にも、浮気を話そうとしない勝己くんにもイライラする。
こんな状況でも、まだ私はこの人のことが好きなんだろうか。
「···この前は、急に帰ってごめん」
「···おう」
ズズッとお茶を飲む音。
言いたいことは言ったので、何気なくテレビをつける。
いつもは全くもって関心を持たない番組にも、視線をそらさず見続けた。
···続く沈黙。
まぁ、どちらも話し出さないのだから当たり前なのだが、ここまで静かだと今ここで一緒にいる意味は無いんじゃないかと思えてくる。
チクチクし続ける心臓を無視して、平然を装ってお茶を飲む。
いつもは隣に座る勝己くんも、今日は人一人分空いていた。
あー、なんだか泣けてくる。
一緒にいる意味あるのかな? もうどこか遊びに行っていいですか? 気まず過ぎます。
「···この前」
「!」
「この前、なんで尾けてたんだよ」
「尾けてなんか、」
「尾けてたろ」
遮るようにして強調される。
顔が合わせられない。情けないが、恐怖で縮み上がっていた。
勝己くんが動いたような気配が隣で揺らめき、その気配は近づいてくる。
背筋を汗が流れていった。
顔を彼の方へ向けさせられる。
「──っ」
───射殺すような目。
いっそそのまま殺してほしかった。
私にはもう、勝己くんに対抗できる術なんて無かった。
───だけど、言いたいことはたくさんあって。
「···そういうことしてまで、私を繋ぎ止めておきたいの?」
「···あ?」
一度口を開いたら、止まらなかった。
「そこまでして、私、いい物件だった?
体の相性でもよかった?」
「···何言ってんだ、お前···」
「そこまでする理由が分からない。勝己くんが分からない。
──そういう風に、今まで人を遊んでたのね」
もう、止まらなかった。