第12章 疑惑中。
ふつふつと沸き上がるドス黒い感情。
個性が発動したのか、瞼が重くなってきた。
微睡みの中に身を任せながら、雨の音に耳を澄ませる。
世話しなく過ぎていく日々。
止まらない車の流れ、点滅する青信号。
砂場で遊ぶ子供の声、なびく洗濯物。
それらが一度にわたしのからだを突き刺した。
結局、そういうことだったのね。
あなたも、私を遊ぶだけだったんだ。
信じられるって思ってたのに。
···だけど、まだ確証はない。
だから───
──────┄
──だから、今調査中。
前方、20mほど先に、帰路を歩く勝己くんの姿。
隣を歩く赤髪の青年はクラスメイトなのだろうか。
ここからじゃよく見えないな···
帽子を目深く被りながら、斜めに移動する。
少しだけ近づきながら、気付かれないようにゆっくり歩いた。
端から見れば、どう見ても不審者だが、今はそんなこと気にしている場合じゃない。
通り過ぎる、ランドセル姿の少年たちの視線が痛い。
こら、こっち見ないの。
しばらくして、勝己くん一人の状態に。
話し相手が居なくなるってことは、多少気付かれやすくなるってことだから、気を付けないと。
「···! あ、あれ?」
居ない!?
一瞬目を離した隙に、どこかに姿を消していた。
は、速い···
「ど、どこ?」
「後ろだ、バカ」
「!!!!!?」
なんで!!!!!?
いつの間に!!!!!?
うわ、目付きやばっ!!
「なんだテメェ···鬱陶しいんだよ、クソが」
「はは···何が?」
自分でもわかるほど白々しい。
今さらこんな嘘、通じないっていうのは分かってる。
だけど、今、私は自分の命の危機を感じていた。
ここで突っ切らないと、身が危ない。
強行突破も考えた。
「尾けて来たろ···学校から」
「そんなことしてないよ! たまたまこっちに用があっただけ」
「じゃあなんだよ、その格好。怪しすぎんだろ」
! 確かに、変装してました感がすごいよね、これ。
「~っ! 私がどんな格好してようが関係ないでしょ!」
脱兎の如く走り出す。
急に走り出したせいでふくらはぎが吊りそうになるったが、構わず走り続けた。
汗が頬を流れていく。
手汗で上手く拳が握れない。
だけど、ただひたすらに走り続けた。