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【ヒロアカ】私たちには余裕がない。

第11章 あなたとわたしのゆめのえがきかた



どうしようもなく好きだと言うことに、気づかないフリをして蓋をして。

そうして、自分を守る代わりに、勝己くんを傷つける。

そんなの、どこが大人なのよ。


私はまだ子供。未成年。

お酒は飲めないし、喫煙だって出来ない。

立場上は、勝己くんと何も変わらない。

···だけど、こんな私でも、大人に見えてたんだなぁ。

なんだか、不思議な気分。


回した手で、勝己くんの背中を擦る。

筋肉質なその体は、ほかほかしていて。

暖かかった。心地よかった。

離れられない。そう痛感する。


腕の力が強くなったように思えた。

起きたのかな、と体を動かしてみても、どうやらまだ起きてはいないようだった。

それにしても起きないな····

あんまり寝過ぎるのも良くないよね···
今日は早く帰すって決めたし。

「勝己くん、勝己くん起きて」

どうしたものか。起きる気配がない。

背中を叩くも、寝息が止まることはなかった。

「うーーーーん···」

とりあえずこの体勢から脱出しようと体を動か、って何だこの力···

ぐいぐい胸板を押すも、びくともしない。


「···ふっ」

「あ」


···。

突如聞こえた鼻の笑い。

···。

「···起きてたの?」

「···」

上を向けないから勝己くんがどんな顔をしているのかは分からないが、少し笑っていると思う。体震えてるし。

溜め息が頭上から聞こえてきたかと思えば、ぎゅうぅぅぅっと抱き締められた。

そんなんで許すわけがない。

「···早く帰ってよ」

「あ? 何でだよ」

「明日も授業あるんだけど」

「そんなん俺も同じだわ」


優しく頭を撫でられた。

そんな些細なことが、私の心を落ち着かせる。

ゆっくり目を閉じれば、鮮明に蘇る出会ったときの記憶。


あんなに怖かった目付きも、気に食わなかった態度も口調も、今では一番私の心を鷲掴みにする。

ゆっくり離れた体と、近づく顔。

その後どうなるのかなんて、当然わかってる。

だからこそ、私は再び目を閉じた。



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