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【ヒロアカ】私たちには余裕がない。

第11章 あなたとわたしのゆめのえがきかた


私の個性は、気分や体調によって大きく変動する。

例えば、とても悲しいとき。

丸二日は寝てしまう。

負の感情が大きくなるほど、感情の昂《たかぶ》りが大きくなるほど、個性の影響は大きくなる。

そして、発動者である私より先に目覚める人はいない。

必ず、私より後に目覚める。

それを利用して、いろんな困難を乗り越えてきた。

だから、今のこの困難にも、乗り越えていけるはず。










────────ーーー


···やっぱり私が目覚めたとき、まだ勝己くんは眠っていて。

二人して倒れたらしく、私が勝己くんの上にのし掛かっていた。

寝返りを打って床に転がる。

眉間のシワが一つもないその寝顔は、まだあどけない子供みたいだ。


さっきの勝己くんの悔しそうな顔を思い出す。


···何をそんなに焦っているんだろう。


そりゃ確かに、私たちには年齢差があるけど、でもこんな差、社会に出たらどうってことないのに。

私は高校生の頃、大人になんかなりたくないって思っていた人間だからか、そういうジレンマや劣等感とは無関係だった。


「···勝己くんは、私よりも強いのに···」


焦ることなんか無いのに。



頬を撫でる。

いつもは拒否されるその行為も、今は誰も邪魔なんかしないから。

だから、めいいっぱい触った。


すると、床に広がっていた腕がピクリと跳ねた。

そして、もぞもぞと何かを探すように動く。

床をバシバシと叩き、寝返りを打って反対側もバシバシしている。

な、何してるの···?


「か、勝己くん···?」


寝惚けているのだろうか。

その背中をトントンと叩く。
また眠ってしまったのか、反応がない。

思い切ってお腹に腕を回した。

背中に額を擦り寄せて、深呼吸する。

汗の匂いが····甘い匂い。なんか悔しい。


しばらくそうしていると、勝己くんが寝返りを打った。

突然訪れた温かみに、心臓がトクトクと速くなる。

背中があたたかい。

頭に乗せられる顎が重い。

勝己くんの顔が見たいけど、この時間が終わってほしくない。

矛盾した感情が大きくなる。


「···あなたの方が、大人じゃない」


私は、ただただ流されているだけ。

大切なものを見つけられたような気がしていただけの、ちっぽけな存在。

あなたみたいには輝けない。
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