第8章 求愛中。
「‥‥ごめんなさい」
意を決して上げた瞳に映ったのは、すごく悲しそうな顔。
‥‥でもさ、あなたもそうじゃない?
「あなたが、暇潰しだって思ってるなら、早くここから出て行って欲しい」
重い女は嫌われる。
確かにそうだろう。
でも、軽い女も、嫌われてる。きっと、自分自身に。
自分を守ることしかできない自分から、相手を本気で愛せない自分から、きっと嫌われている。
「‥‥爆豪さん、まだ高校生なんだから。これからもっと色んな出逢いあるよ」
だから、私にする理由がない。
──こうして、私も私から嫌われていく。
眉を歪ませる爆豪さんは、深い深いため息を吐いた。
「‥‥何回、何回言えばいいんだ? 俺は」
「え?」
「テメェは、俺のもんなんだよ。この意味、きちんと言わねぇとわかんねぇか? あ?」
こわっ‥‥
でも、その言葉、誰にだって使えるものじゃないの?
「わかりません」
「あ"? ‥‥‥チッ、馬鹿か」
馬鹿かも。
「‥‥私の名前、呼んでくれたことあった?」
「は?」
ストン。
何かが、ピッタリ収まった。
‥‥‥あれ?
‥‥もしかして、これ?
私が、一番気にしてたもの?
「‥‥私の名前、全然呼んでくれない。お前とか、テメェとか‥‥‥みんなと同じじゃないのに」
ポロポロ涙が出てくる。
疑問が、確信に変わった。
──私、名前を呼んで欲しかったんだ。
安っぽいことかもしれないけど、そう。
ティッシュを取ろうと手を伸ばすと、その手を握りしめられた。
もう片方の手で、涙をぬぐわれる。
「‥‥‥悪かった」
「!」
謝っ‥‥た?
え!? 謝られた!?
「だけどな‥‥お前のその『爆豪さん』も癪に触んだよッ」
「‥‥え? ‥‥爆豪さん、でしょ」
下の名前、知らなかったし。
「だぁぁクソッ! 下の名前で! 呼べや!!」
「は!?」
BOOM!!!! と爆発音がした。
涙をぬぐってくれた手から、火花が散る。
え、何これ、怒ったら出てくんの?
「‥‥さっき、名前で呼んだろ。もっかい言ってみろや」
「!! さっきって‥‥さっきはさっきでしょ! 終わりだよ」
「はぁぁ!? ッざけんな、クソが!」
両手が、BOOM!! BOOM!! している。
すごいこの個性‥‥ダイナマイトみたい‥‥