第7章 伺い中。
──でも、この人の傍に居るって決めた日から、こういう未来は覚悟していたから。
大丈夫。別れろって言われたら別れるだけ。大丈夫。
『うちの息子、迷惑かけてるでしょ』
「‥‥え?」
──でも、聞こえてきたのは予想外の答えで。
さっきまでと打って変わって、優しい声色が響いてくる。
電話の向こうで、爆豪さんのお母さんは笑った。
『うち、来ない?』
「え、えぇ!?」
『どうせ勝己、今寝てるかなんかしてるんでしょ? 今の内に、ね?』
「え、えぇぇ‥‥?」
爆発したかのような急展開に、心臓が爆発しそうになる。
うち? 家? 爆豪さんの家に? 今から!?
え‥‥一人にして大丈夫かな‥‥?
起きたとき誰も居なかったらビックリしないかな?
だけど、電話の向こうで催促の声が響く。
お母様のお願いに逆らえる訳もなく、私はこっそりと家を後にした。
──────---
「──あ! こっちこっち!」
「! 初めまして‥‥!」
「堅っ苦しい挨拶は無し。とりあえず、うちにおいで」
「はい‥‥」
駅で待ち合わせをして、そのまま爆豪邸へと向かう。
「勝己と私、そっくりだからすぐに見つけられるわよ~」と言っていたが、確かに‥‥似てる。
隣を歩くお母様に見とれてしまう。
綺麗‥‥肌、ちょー綺麗‥‥。
「‥‥ん?」
「あ、いえ‥‥」
「あの子、我が儘でしょ」
「あ、はい! あ、いえ、いいえ!」
「あははっ、正直にいいよ」
「私には‥‥勿体ない人です」
格好よくて、強くて、男らしくて。
私が欲しかったものを、目の前で取っていってしまうような、凄い人。
私とは釣り合わないはずなのに。
「‥‥昔から、チヤホヤされてきたの。個性のせいでもあったし、あの子自体が個性をよく出す子だったから」
「個性‥‥か、勝己くんの個性は見たことないです」
「あれ!? 無いの!?」
「はい」
信じられない、って顔をされた。
え? そんなによく出してたのかな‥‥
「昔から、バカの一つ覚えみたいにボンボンボンボンやってたのに‥‥」
「ボン?」
「‥‥よっぽど、大切にしたいのかー」
「‥‥‥」
『大切』‥‥。
どうして、そんなに大切にしようとするんだろう。
この前会ったばっかりの、お互いの誕生日も知らない赤の他人を。