第7章 伺い中。
あれは、一時間ぐらい前。
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───prrrrrr‥‥‥
「‥‥ん?」
着信音が響く。
いつもマナーモードにしてるから、部屋に着信音が響くのは珍しい。
「爆豪くんのかな?」
じゃあ放っておこう‥‥そのうち止むだろう‥‥
と、思っていたのに。
───prrrrrr‥‥
「‥‥‥」
───prrrrrr‥‥
‥‥起きないな‥‥ってか、しつこいな‥‥
そーっと、罪悪感に追われながらポケットを探る。
見るだけ、出たりはしないから‥‥
「ん‥‥」
「!?」
──ピッ
「!?」
寝返りを打った爆豪さんに驚いて、スマホの画面をタップしてしまった。
うわ‥‥画面見てなかった‥‥最悪‥‥
『こんの、勝己ッ!! 電話くらい出なさいよッ!!』
「!?」
誰!? 早々に叫ばれてるけど!?
何やら怒号が響いているが、私は勝己じゃないので返答することができない。
どうしよう‥‥黙って切ったら、後々の爆豪さんが可哀想だ。
『聞いたわよ!? また怪我したんだって!? あんた弱っちいくせに見栄張るから』
‥‥え?
怪我? ‥‥あぁ、この痛々しい包帯の数々ね‥‥
『つぅか、早く帰ってきなさいよ!! またどっか寄り道してんの!? 最近は夜遅くまで帰って来ないで‥‥』
! あ‥‥
それ‥‥私のせい、だ。
会話からして、多分爆豪さんのお母さん。
怒りたくもなる。そりゃそうだ。
折角、毎日頑張っている子供のためにご飯まで用意して、なのに、ご飯が冷めるまで帰って来なくて。
私‥‥黙ってる場合じゃない。
『ちょっと!? 聞いてんの!?』
「‥‥あの」
『‥‥‥え?』
声が震えてる。情けない。
でも、見て見ぬふりをしてた問題と向き合えるチャンスが来たから。
ちゃんと、向き合わなきゃいけない。
『えっ‥‥と、どちら?』
「‥‥私、房田 玖暖と言います。
爆g‥‥勝己さんと、お付き合いしています」
『‥‥‥えっ』
「ご挨拶が遅れて、しかもこんな形で、本当にごめんなさい」
見えない相手に頭を下げる。
心臓がバクバク言っている。止みそうもないその鼓動を、グッと掴むように拳を握った。
『‥‥勝己、と‥‥』
「‥‥はい。すみませんでした」
怒られる。多分怒られる。