第3章 居座り中(?)。
翌朝。
目覚ましじゃなく、着信音で目覚めた。
けたたましく鳴る着信音。マナーモードにしてなかったっけ‥‥
「‥‥もしもし」
『玖暖? もしもし?』
「‥‥あー‥‥お母さん?」
『そうそう! お母さん!』
朝から元気なお母様。
着信音で眠気も吹っ飛んだ私は、顔を洗いに洗面所へ向かった。
スピーカーにして棚の上に置く。
「なんか用?」
『なんかっていうか、今そっち向かってるから、あと20分くらいで着くわねー』
「‥‥‥え?」
顔を拭く手が止まる。
『向かってる』?
「‥‥来てるの?」
『うんー、‥‥あれ? 言うの忘れたっけ?』
‥‥マジかよ、母。
「‥‥お母さん、そういうのは早く、」
『あ、着いたわー、じゃあもう少ししたらそっち伺うわねー』
「ちょ」
ブツッ───
‥‥テンポが掴めないお母様。
っていうか! 今から大学なのに! この家に居座ってもらうのはちょっと‥‥嫌、です。
昔からGoing My Wayなうちの母。
すごく、自由。悪く言えば勝手。
決めつけもすごいし、変な所こだわるし‥‥って、親なんてそんなものか。
「‥‥あ、遅刻する!」
お母さんには、ホテルにでも泊まってもらおう。
─────---
「あ! こっちよー、こっちー」
「こっちーじゃないよ‥‥私、遅刻する‥‥」
「すぐ終わるからー」
ごそごそと紙袋を探るお母さん。
何が出てくるのかと構えていると‥‥
「──はい! プロテイン!」
「‥‥‥は?」
‥‥プロテイン‥‥
「‥‥私、プロテイン好きとか言ったっけ?」
「知らんけどー、お裾分けー」
「‥‥はあ」
何だか知らないけどプロテイン入手。
これ持って大学行くのか‥‥
「あと、鍵貸してー」
「え!? やだよ、なんでよ!」
一番恐れてたこと。易々と起こる。
「どーせろくなもん食べてないんでしょー。作っとくわー、感謝しー」
「嫌だ! ちゃんと食べてるから!」
「嘘!」
「なんで!?」
なんでこんなに信用ないの!?
お母さんの手伝いだってしてたし、高校生の頃は自分でお弁当とか作ってたのに!
信用なくね!?
「忙しー言ってたでしょー、作ったらすぐ帰るから」
「‥‥何時の新幹線に乗るの?」
「なんでそんなに信用ないの!?」
全く同じこと訊きたいけどね。