第1章 路地裏イチャイチャ in 団長
「この二人がしていたのは…夫婦漫才だ」
「な!?」
「はい!?」
「めおと、まんざい?」
「あら、あらあらあら」
不思議そうなパン屋の娘と、やっぱりと呟いては頬を染める花屋の女店主。
「扉を開けたままにしてもらっていて、助かった。でなければ」
そう言ってミケが視線を向けたのは、路地の入口、そしてその先に広がる噴水のある広場。
「あそこから丸見えだっただろうな」
「うん。よく見えたと思う」
「そうね、全部見えていたわね」
「それに、憲兵ではなく俺を呼んでくれたのも有難かった」
「???」
「…そちらの男性は、調査兵団の団長さん、ですよね?」
「あ、あぁ…」
壁外での活動が主といえ、さすがに団長ともなればその顔を知る人も少なくない。
「エルヴィン、命拾いしたな。憲兵や駐屯兵であれば…」
「!!!」
今のやり取りが、筒抜け。
「いのちびろい、ってなに?」
「ぎりぎりで助かった、ってことかしら」
「あぁ、その通りだ。機転を利かせてくれたおかげで助かった。何しろ、兵団トップのこんな姿なぞ……フ」
「…っ、大変申し訳ない。見苦しいところを見せてしまった」
「あの、私も…ごめんなさい!」
二人同時に頭を下げる。
「ううん、大丈夫だよ。めおとまんざい面白かったから」
「そうね、面白かったわね。それに」
「それに?」