第1章 路地裏イチャイチャ in 団長
「お前達、いい加減にしろ」
「ナナバ、今日こそは認めてもらおう」
「エルヴィンこそ、絶対に『そうだな』って言ってもらうんだから」
「おい」
「私はいいんだ。そんな要素なぞ一切ないからな」
「私だってないって、そう何度も言ってる!」
「おい…」
「そうやって素直じゃないところも可愛い。それでも認めないのか…?」
「エルヴィンこそ、何してもかっこいいんだから…絶対言わせてみせる!」
「……はぁ」
溜息からは、早かった。
バチバチと火花を散らすナナバとエルヴィン、それぞれの肩をぐいと引き、強引に正面を向かせる。
「!?」
「!?」
バチンッ!!!
バチンッ!!!
「…くっ!」
「いっ、たぁ…」
「人類最強直伝だ」
おでこの真ん中を押さえる二人の目の前には、仁王立ちで両手を掲げるミケ。
「うわ、すごい音…」
「そうね、すごかったわね…」
「あれ、痛いかな?」
「きっとすごく痛いと思うわ」
「すまなかったな」
ミケは顔だけ振り返ると、二人へと詫びる。
いつでも繰り出せるよう、掲げた手はそのままに。
「ううん、平気だよ」
「えぇ、大丈夫です」
「でも、何してたの?お兄ちゃんとお姉ちゃん」
「それはね、きっと…」
(俺はおじさんで、エルヴィンはお兄さん…)
ほんの少し肩を落とし、それでも、振り返ったミケはパン屋の娘の頭を優しく撫でる。