第1章 路地裏イチャイチャ in 団長
「失礼ですけど…調査兵の方って、すこし近寄りがたかったんです。どうして命をかけてまで、わざわざ危険な壁の外へ行くのかしらって不思議で。きっと変わった方達なんだろうな、って」
「……」
「でも、同じですね。私達と同じ」
と、パン屋の奥から
『お昼よー』
と声が掛かる。
「はーい!それじゃ私行くね。バイバーイ!」
ぱたんと閉じられた勝手口からは、
『おとーさん!おかーさん!めおとまんざい見たよー!』
『だからか~、なんか賑やかだったもんな』
『ね、どんなだったか後で聞かせて?』
『うん!』
という楽しげな会話が聞こえてきた。
「っ!」
「うそぉ…」
「自業自得だ。少しは反省しろ」
「あらあら、うふふ」
と、今度は花屋の店先から、
『奥さ~ん、いるかい?』
と呼ぶ声が。
「あら、お客さん。私も失礼しますね。どうぞこれからも、仲良く、ね?」
ぱたんと閉じられた勝手口からは、
『おや、何だい?楽しそうじゃないか。何かいい事あったかい?』
『えぇ、本格的な夫婦漫才を見られて…ふふ』
そんな会話が漏れ聞こえてきた。
「俺は行く。続きをしたいなら、戻ってからにしろ」
それだけ言い置くと、ミケは陽光の降り注ぐ広場へと。
賑やかな声が微かに聞こえる路地裏には、真っ赤な顔のナナバとエルヴィン。
この日を境に、調査兵団のイメージがほんの少し変わった事を知るのは、そう遠くない先のこと。
了