第1章 路地裏イチャイチャ in 団長
「あの、調査兵団の方ですか?」
「? あぁ、そうだが」
「よかった。すみません、急ぎで来ていただきたくて」
「何かあったか?」
「喧嘩?になるのかしら…?」
「…?」
「あの、だめですか?」
喧嘩ならば憲兵か駐屯兵の方が適任では?と思ったが、わざわざ探して声を掛けてきたという状況に素直に頷いた。
「もう!何度も言わせないで!」
「君こそ、何故認めないんだ!」
「まだ終わらない…」
「ただいま」
「お姉ちゃん、お帰り。このおっきいおじさん…誰?」
「救世主よ」
(救世主?いやそれよりも、この声は…)
訝しがりながらも、開け放たれた二枚の扉の隙間を覗いてみれば、その奥には見知った二人の姿。
「皆見てたよ、エルヴィンのこと」
「違うな。ナナバを見ていたんだ、間違いない」
「どうして同じことばかり…!」
「君こそ同じことばかりだが?」
「ずーっと同じこと言ってる。ぐるぐる~ぐるぐる~」
「そうね、仲がいい証拠ね」
「そうなの?」
「そうなの」
「すまない、煩いだろう…?」
「ううん、平気だよ」
「えぇ、大丈夫です」
「すぐに止める。扉はそのままで頼む」
「はーい」
「よろしくお願いします」
尚も収まる気配のない二人に、大股で近付く人影。
だが、ヒートアップし完全に二人だけの世界を作り出しているせいか、まったくそれに気付かない。