第1章 路地裏イチャイチャ in 団長
「はぁ…何度も言うが、君は可愛い。だから皆が見ていたんだ。思わず嫉妬してしまう程にね」
「エルヴィンこそ、かっこいいって何度も言ってるのに…夜会でだって、すぐに取り囲まれてるでしょ?なのにちっとも聞かない」
「当り前だろう、かっこよくなどないからな」
「私こそ、可愛い要素なんてないけど?ほら、これ」
そう言っては、一歩引いて両腕を広げる。
「いつもと代わり映えしないよ?」
シンプルなシャツに、これまたシンプルなスキニータイプのパンツルック。
確かにステレオタイプの女性らしさ…
例えば"ふわ"とか、"ひら"とか、そういった要素はない。
「これじゃ可愛いなんて言えない」
「清潔感があっていいじゃないか。それに君に似合っているからいいんだよ」
「またそうやって…エルヴィンは私を甘やかしすぎ!」
「そんなつもりはない。思ったままを言ったまでだ。それに…」
「それに?」
「君を甘やかしたいよ。いくらでも」
「……」
「…ナナバ?」
「…エルヴィンも、もう少し自覚して」
「かっこいい、というのか?しかしそれは」
「かっこいい!間違いなくかっこいいから!」
「お姉ちゃん」
「なに?」
「いつになったら終わるの?」
「それは…」
ただひたすらにループし続ける痴話喧嘩。
いや、言い方こそ勢いがあるが、内容はただただお互いを褒めあっているだけ。
「お腹すかないのかな?」
「そうね、すいちゃうかも」
「誰か呼んでくる?」
「……私が行くわ。このまま観察しててくれる?」
わかった~という声を合図に、花屋の女店主は小走りで広場へと向かう。