第5章 路地裏 in ハンジ&モブリット
「すごいね、錚々たるメンバーってこの事だ」
「分隊長も入ってますよ?」
何気なく答えたこの一言。
「私も、入ってる…?」
「はい。錚々たるメンバーの一員ですよ、間違いなく」
まずは役職。分隊長といえば団長・兵士長に続き序列三位だ。誰しもがなれるものではない。
そして没頭する研究等からは頭脳派として名を馳せ、エルヴィン団長のブレーンと称されている。
そして何より、部下に慕われている。
同じだけ迷惑も掛けているが、それでも憎まれない。人徳というものだろう。
「ふ~ん…そうかそうか……」
「?」
「よし!だったら試してみよう!」
「は、はい?(試す?)」
いったい何を、と言いかけたモブリットだったが、気付いた時にはその視界は揺れるポニーテールで埋め尽くされていた。
「……へ?」
「これで何か起これば、私の仮説は立証される!」
「ぇぁ、え、は、え?仮、説?」
「そう、仮説。普段あまりない事がここで起こって、それ以降皆に変化があっただろう?だからさ」
今ここでモブリット相手に普段ない事をして、今後どうなるか見てみよう。
つまるところハンジは、自分と部下を実験台としたのだ。
「あ」
「ぁ?」
「やっぱ、ほっぺたよりベロチューの方がいいのかな…
もう一回やっとく?」
そう言いながら、唇の端をぺろりと舐める。
ほんの一瞬見えた舌先。
やたらと赤く見えたのは気のせいだろうか…?
そしてそれを驚きの表情で見つめたまま、固まるモブリット。
「………」
「おーい」
「………」
「モブリット~?」
「………」
「モ~ブリットさ~~~ん?」
「…ハ!」
「お、戻ってきた。
でさ、どうする?ベロチューやっとく?」
「帰りましょう!今すぐカエリマショウ!」
ぎくしゃくと、まるでブリキのおもちゃのような動きでハンジの手首を握る。
そのままこれまたぎしぎしと、軋む音が聞こえそうな足取りで振り向き広場へと歩き出す。