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あの日、あの時、路地裏で。

第5章 路地裏 in ハンジ&モブリット



「お邪魔しまーっす!」

ぴょん、と小さく跳ねるように一歩路地へと入る。

そしてそんな上司の二歩後ろ、付き従うようにして一歩踏み出すモブリット。その視界の中心には、楽しそうに揺れるポニーテール。

「案外綺麗だ。
 って、ごめん、失礼だね」

「いえ、路地裏と言えばそういうイメージでしょうし」
「でも、『見えないところこそキレイにしなくちゃいけない』ってお母さんが言ってた」

「至言ですね」


未舗装ながら、綺麗に片付けられた路地。

下から上、上から下…眼鏡の奥の瞳は、興味深げにじっくりと観察していく。まるで一つも取りこぼすことなど無い様に、と。


「うーん…
 見る限りでは特別変わったところはないけど」

『ま、まだ入り口だしねぇ』と最奥を見つめながらその顔には好奇心にあふれた笑顔が浮かぶ。


「ですが、悉くナニカが起こっているのは確かなようです」

モブリットは小さなメモ帳を一枚捲ると、とんと人差し指で軽く指す。


「ケース2、ゲルガーとクークさん」

「夜ね、声が聞こえて見てみたらね」
「男性が女性をおぶさって路地を出ていくのが見えました」
「あのお兄ちゃん、おもしろい髪の毛してた!」
「でもとっても優しそうな方でしたよ」


ゆっくりと進む二人を追う形で、花屋の女店主とパン屋の娘が歩きながら答える。

どうやら、あの日の二人の後姿を見ていたらしい。


「ぷふっ、面白い髪…確かにそう見えるかも。でも、言われるがままに後輩の面倒を見るなんてさ、いいとこあるじゃない?」

「実際、ゲルガーは面倒見いいですから。
 ミケ分隊長の影響かもしれませんね」


実は以前から、この二人は噂になっていた。
だが、渦中のゲルガー自身が『あ?あぁ、それな。先輩後輩として仲良くやってるだけだぜ?』と何の違和感もなく答えるものだから、誰しもがそれ以上の追及はしていなかったのだ。

それが、あの日のマーライオン事件以来、微妙に空気が変わったらしい。特にゲルガーの。


『いやその…アイツ、見てないとどんだけ飲むか……
 あ、危ねぇからな!俺が見てないと!』
とゲルガーは単なる面倒見の良さを超えたテレと共に答えたのだ。



「だいぶ急接近!って感じだ」

「二人とも、以前とは明らかに雰囲気が違います」


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