第4章 路地裏イチャイチャ in 兵長
そんな事、ある訳ない。
が、ふつふつと湧いてくるいたずら心。
何しろ目の前にリヴァイがいるというのに、彼女の頭の中、中心に居るのはミケ。
…人の気も知らないで。
(多少からかう位はいいだろう…)
「で、俺へは無しか」
「へ?」
「俺への礼は無しかと聞いている」
ふいと広場に顔を向ければ、そこは相変わらずの人の多さ。
「お前を引っ張り出すのに、服に皺が出来た。整えたばかりだったんだがな…?」
「…っ」
「ほら見ろ、紙袋も潰れてる」
中身は無事だが、それは言わない。
「労働にはそれ相応の対価が必要だと、思わないか?」
「……」
目の前の彼女は、些か狼狽えたような表情で何やらか考え込んでいる。
少々言い過ぎたか。
となれば、自分に対する評価はマイナスと査定されているだろう。
幾分かでもひっくり返すには…
リヴァイも同じように考え込みそうになった、その瞬間。
「あの…もし宜しければ…」
と、思いの外落ち着いた口調でが話し出す。
「御満足いただけるか自信がありませんが、戻りましたらハーブティーを…」
「あぁ、ミケと一緒にか」
それでいい、と言いかけたところに、意外な一言。
「いえ、今日は一日お忙しいとのことで、お約束いただいたのは明日なんです」
「!」
それはつまり…
兵舎に戻って、が淹れたハーブティーを飲む。
二人きりで。
「あぁ…分かった」
思いがけない展開。
これが俗にいう、棚ぼた、というものだろうか。
そうと決まれば気が急いてしまうのは仕方のないこと。
「さっさと帰るぞ」
「はい……」