第4章 路地裏イチャイチャ in 兵長
不安そうに、広場を見つめる。
「どうした」
「いえ、何というか…また流されてしまうのではないかと」
ダメですね、と困ったように笑う彼女。
「アイツと、ミケと来た時はどうした」
「…危なくない様にと、手を繋いでくださいました」
私って、子供っぽく見えるんでしょうか?
と、困っているだろう台詞とは裏腹な、嬉しそうな横顔。
(アイツめ…)
記憶にある限りでは、まだ二人は付き合っていない。
それどころか、お互いがお互いを好きなのは誰が見ても明白なのに、当の本人達はそれぞれ遠慮しているような雰囲気さえある。
が、ここにきてミケが攻勢にでた。
ような気がしてくるリヴァイ。
ならば…自分も同じようにすればイーブンか。
(………クソ)
「これで、我慢しろ」
差し出されたのは左の握り拳。
「?」
「手なんて繋がない」
そう広場を睨みつけたまま言うリヴァイ。
いや、出来るならば繋いでいきたいところだ。
そうやって並んで、兵舎の入口まで歩いていく。
そうすれば幾人かの目に留まり、多少なりとも噂になるだろう。
「だから…」
しかしそうなった時、はどう思うだろうか。
リヴァイを悪く言う事はない。
だが、内心複雑な思いをすることは容易に想像出来る。
勿論そんな思いをさせるのは、本意ではない。
「袖でも掴んでろ」
少しでも、自分を見てくれたなら。
だがしかし、困らせたくはない。
(案外優しいだろう?)
帰れば、ご褒美とも言えるお茶の時間が待っている。
(それで我慢してやるよ、今は、な)
「早くしろ。迷子になっても知らねぇぞ」
「…はい、ありがとうございます」
がそっと袖口を摘めば『行くぞ』と静かに歩き出す。
「あの、兵長は甘い物、お好きですか?」
「好きと言う程ではないが…多少は、な」
「でしたら、クッキーを焼きますね。少しお時間をいただいても…?」
柄にもなく低姿勢だったな…と思っていれば、ほら。
(……優しくすると、いいことがあるもんだな)
「あぁ、楽しみにしてる」
爽やかな香りのハーブティーと、リヴァイ好みの、甘さを控えたクッキーと。
秋晴れの中のお茶会は、二人きりで。
了