第1章 プロローグ
「はぁ~、うまくいかないなー…。」
帰り道、駅に向かう途中で私は空を見上げて、ぼそりと呟いた。
何度もオーディションに落ちていたため、すっかり自信がなくなっていた。
(やっぱり…、才能ないのかな…。)
そう思っていると、遠くからギターの音色と歌声が聞こえてきた。
「♪~、♪♪~…」
私は音が聞こえるほうに歩いて行った。
するとそこにいたのは、私と年が同じくらいの女の人で、1人で弾き語りをしていた。
「……!…。」
立ち止まって見ている人は、私をはめてもほんのわずか。
でも、その人は本当に楽しそうに歌っていた。
その姿に私は思わず、立ち止まって見入ってしまった。
その人を見ていると、さっきまで悩んでいたのが何だったんだろう…?と、思ってしまうほどだった。