第7章 〖誕生記念〗溺れる微熱に、口づけの花束を / 石田三成
「ありがとう、三成君。私のために、無理してまで帰ってきてくれたんだよね」
「美依様……」
「怪我して帰ってきて、びっくりしたけど…でも、それだけ私に会いたいと思ってくれたこと、すごく嬉しい。ありがとう、三成君」
「……っ」
小さな手から、淡い温もりが移る。
それは、少しだけ落ち込んだ私の心に染み入り…
なんだか、私をほっこりと温めた。
『嬉しい、ありがとう』
その言葉が聞きたかった。
私は美依様に…喜んで欲しかったのだ。
「美依様」
「あ……」
私は美依様の肩を優しく引き寄せ、そのまま抱きすくめた。
こうした方が、もっと美依様を感じられる。
柔い体温も、高鳴る鼓動も…
触れ合うことで、全て溶け合い混ざり合って。
────もっと、貴女が愛しくなる
「自分の事ばかり考えて、本当にごめんなさい。でも…どうしても貴女に会いたかった。待っているのを知っていたから」
「三成君……」
「帰って来れて良かった。今、貴女の傍に居られて…本当に嬉しいです」
「私も…すごく嬉しいよ」
顔を伺えば、美依様は優しく笑っていた。
目元を染め、少し照れたように。
ああ、少し抱き締めるだけで、こんなに愛しい。
その感情は、私の心を締め付け…
同時に淡い薄紅に染まった気がした。
「お誕生日おめでとう、三成君」
(……帰ってきて良かったな、本当に)
もう一度抱き締め合い、温もりを溶かし合う。
誕生日に愛しい人の傍に居られる事。
それが、こんなに幸せだとは、美依様に出会わなければ、知り得ない事だった。
私の大好きな戦術書や文献には、書かれていない。
人がどれほど温かいか、そして。
どんな知識も叶わないくらい、心を惹き付けるか。
それは浅ましいほどの渇望を生み、えげつなく。
でも何よりも純で、美しいものなのだと。
────貴女が教えたのですよ、美依様
私達は離れていた時間を埋めるように、きつく抱き合い、お互いの温もりを確かめ合った。
そして、その後美依様が私にくれた『贈り物』
それは、さらに私を貴女に惹き付け、溺れさせる原因となるのだけど。
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