第5章 【世にも淫猥な御伽草子】白雪姫ver.
それは、赤く艶々とした林檎です。
信玄女王様は姫に林檎を渡しながら、その林檎について説明します。
「これは魔法の林檎だ。これを食べると、君は一回死ぬ」
「死……っ!」
「だがな、愛する者の力で生き返る事が出来るんだ」
「ほ、本当に……?」
「きっと君の想い人が、君を救ってくれる。誰が好きか解らないのなら…賭けてみないか?」
姫は林檎を受け取り、悩んでいるようでしたが……
素直な美依姫の事です、信玄女王様の言葉を信じ、その林檎をひと口かじりました。
すると……
美依姫はその場に崩れ落ち、命を落としてしまったのです。
本当に美依さんは…純な人だ。
まぁ、それが君の良い所なんだけど。
信玄女王様は美依姫の亡骸をベッドに運び、書き置きをして去ります。
そして、夕方になり──……
仕事から帰ってきた小人達は、その書き置きをみて仰天するのでした。
『────淫乱な小人諸君に挑戦状だ。
白雪姫は、俺の手によって命を落とした。
彼女は毒林檎を食べて死んだ。
お前達の力で、姫を生き返らせてみろ。
見事、生き返らせる事が出来たものが──……
美依の真の想い人ってことだ。
ちなみに、この白雪姫の原作に基づき、
一人の王子がそちらに向かっている。
ツンデレだが、いい男だぞ?
王子に姫を取られたくなかったら、
小人で下剋上でも起こしてみるんだな』
「……舐めた真似を、結果など解りきった事だ」
信長はくしゃりと手紙を握りつぶしました。
政宗も、家康も、秀吉も、光秀も、三成も、謙信も。
お互いがお互いを睨み合い、火花を散らします。
「美依は俺が好きに決まってんだろ」
「いいや、政宗。俺の夜伽の時が一番イイ声をあげていたぞ?」
「お前は夜伽の描写すらなかっただろ、光秀」
「何を戯けた事を…お前達全員斬り捨て、俺が美依を救う」
「お前はそれしかないの、謙信」
「うーん、困りましたね……」
そんないがみ合いが続いていると……
家のドアが、ノックされました。
三成がそのドアを開けてみると、一人の青年がさも機嫌悪そうに姿を現しました。