第39章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 謙信END
「美依、先程佐助から聞いたのだが、どうやら越後への道が新雪で通れなくなったらしい」
「え、帰れないってことですか?」
「迂回の道はある、だが"くりすます"までに越後へ到着は難しいだろう」
「そう、ですか……」
(明らかにがっかりしているな)
美依の声色が少し下がったのを感じ、俺は美依の頬に手を伸ばした。
指の背で柔らかな頬を撫で、俯きかけた顔を上げさせる。
そう落胆するな、美依。
俺はお前が喜ぶなら何でもしてやりたい。
そう、望むものを届けてくれる『さんたくろーす』にだってなってやる。
「だから、お前に贈り物を用意した」
「え?」
「"くりすます"は贈り物を贈り合うのだろう?少し早いが、俺からのくりすますの贈り物だ」
そう言って、俺は懐から赤い組紐を取り出した。
そして、それを美依に手渡す。
目を丸くしている、愛しい女に……
その組紐の『使い方』を教えてやった。
「その紐で、俺の両手首を縛れ」
「えっ…どうして」
「いいからやってみろ。話はそれからだ」
驚く美依の目の前に、俺は両手首を差し出す。
美依は目を瞬きさせながらも、赤い組紐で俺の手首をまとめ上げた。
優しく結び、蝶々を作る。
これで俺の手は不自由になった訳だが……
先程、佐助が面白いことを聞かせてくれた。
だから、このようにさせたのだ。
「謙信様、結びましたよ」
「これでいい。……美依、佐助から聞いた。贈り物には"りぼん"を結ぶのが決まり事だと」
「あ……確かにリボンを結びますね」
「だから、こうさせた。お前への贈り物は……俺だ」
「……!」
美依がますます目を見開く。
俺は結ばれた手首を美依に見せながら……
身の内に巣食う焼け付くような激情を口にする。
そう、お前が欲しいと。
「────愛している」
「っ……」
「お前が居なければ、俺は息も出来ない」
いつしか全てを奪われた。
内心はお前で染まっていった。
────もう…お前なしでは、この世は灰だ
「お前の全てが欲しい。その心も体も、髪の一本でさえ…俺のものにしたい。愛している、お前が望むなら…俺自身も全てお前に捧げてやる」