第39章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 謙信END
(越後に到着出来ないと知れば…落胆するかもしれんな)
『楽しみだなあ』
一緒の馬に乗りながら、そう可愛らしく笑っていた美依。
あの顔が曇るのは、出来れば見たくない。
何か手は無いものか……と思案していると。
佐助が眉ひとつ動かさずに、サラリと言ってのけた。
「なら、ここでクリスマスを祝うに限ります」
「……ここでと言っても、旅の途中で何も準備が出来ていない」
「謙信様、サンタクロースの話を覚えていますか」
「天主で話していた、贈り物を持ってくる者のことだな?」
「いっその事、謙信様がサンタになってみるのは」
佐助の提案に、思わず考えを巡らせる。
美依の欲しいものなど解らないが『さんたくろーす』として何か贈ってやれば、美依は喜ぶかもしれない。
だが、櫛でも簪でも着物でも、今からすぐに準備するのは難しいだろう。
と、なれば、贈れるものは───………
そこまで考えて、ふっと笑みを漏らす。
俺も変わったなと、嘲笑してしまうが。
それも美依が齎したというなら悪くないかもしれない。
「そうだな、それもいいだろう」
佐助の提案に答えた時、気持ちは決まっていた。
もし俺が"そう"したとしたなら……
─────美依は喜ぶだろうか?
「謙信様、戻りました」
それから少し経って、美依が湯浴みから戻ってきた。
窓辺で手酌をしていた俺は、湯上りの美依の姿を見て少し目を見開く。
どことなく気怠い雰囲気が色っぽく、まとめ上げた髪も若干濡れていて、また色気を醸し出していた。
普段は可愛らしい印象の美依、女の色香を垣間見た気がして、少しばかり落ち着かない。
「────おいで、美依」
「っ……はい」
騒ぐ心を抑え、美依を手招きする。
美依は上擦った声で返事をすると、素直に俺の傍で腰を下ろした。
(酷く高ぶる……酒のせいだろうか)
くらくらと目眩まで起きている気がして、そのまま美依を見つめれば、美依も何やら熱っぽい視線を送ってきた。