第39章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 謙信END
「不満じゃ…ない、です……」
「なら良し。佐助、美依の荷もここへ」
「かしこまりました」
家臣達が美依の少ない荷物も部屋に運んでくる。
美依はその間、頬を染め俯いたままだった。
俺と同室で恥ずかしいのか、照れているのか。
何にせよ…愛らしいことには違いないのだが。
(愛しすぎて……参ってしまう)
たわいもない、弱い娘。
第一印象はそれだった美依だが、本当は聡く強い娘なのだと知った。
女を遠ざける一因であった姫とは、まるで違う。
そんな美依だから、俺は惹かれたのかもしれない。
素朴な花のような笑みも、とても愛しいと思うし……
美依の全てに囚われてしまっている、と言っても過言ではない。
「────美依」
「っ……!」
美依の顎に指を掛け、ゆっくり上を向かせる。
視線が絡めば、美依は目を少しだけ潤ませ、どこか期待しているような眼差しで。
そんな表情に、心が高ぶる。
本当に色々"期待"してくれているのなら嬉しいのだがな?
それを思えば、酷く内心が疼いて……
焦がれるような蜜な感情に支配されていったのだった。
*****
「謙信様、失礼します」
「……佐助か」
日が暮れ、湯浴みも済み。
部屋で酒を嗜んでいれば、佐助が姿を見せた。
ちなみに今は美依が湯浴みに行っているため、部屋には俺一人である。
家臣達は気を利かせているのか、俺と美依の部屋にはあまりやって来ない。
佐助もそれに倣えだったのだが、一体どうしたというのだろう。
佐助は部屋に入ってくると、俺の前に正座をする。
そして、落ち着いた口調で話し始めた。
「いつも通っている越後への道が、どうやら新雪で通れなくなってしまったようです。迂回の道はすでに確保していますが……」
「迂回出来るなら、なんの問題もないだろう」
「帰るだけなら問題ありませんが、迂回するとクリスマス当日までに越後へは到着出来ません」
「……成程な」
それを聞き、俺は眉を顰める。
美依は『くりすます』を楽しみにしていて、越後へ一緒に来る事を決めたのは俺と『くりすます』を楽しみたいからだ。