第39章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 謙信END
「今宵はこの村で一泊するか、美依」
「越後まではまだ遠いんですね」
「そうだな、だが"くりすます"までには到着出来るだろう、心配するな」
「はいっ、楽しみだなあ」
同じ馬上の美依が嬉しそうに笑む。
そんな花が咲いたような可愛らしい笑顔を見て、俺も思わず口元を緩めた。
────安土を後にする間際。
姿を見せた美依はしっかり旅支度を整えていた。
そして信長に向かって『越後へ行く許可をください』と頭を下げたのだ。
それは、美依が俺と『くりすます』を過ごしたいと思ってくれた故。
そんな美依の意思を汲み、信長も『気をつけて行ってこい』と許可を出した。
(女など……弱く目障りな存在であったのに)
いつしか美依に心惹かれる己がいた。
女など愛するものかと思っていたのに……
美依はそこらの女とは違い、俺の心にすんなりと入ってきた。
そして、いつしかその存在は大きくなっていった。
『愛している』と自覚すれば、戸惑いもあったけれど、俄然自分のものにしなくてはと。
異常なほどの激しさでそう思ったものだ。
だから、この好機を逃しはしない。
美依は……俺を選び、ついてきたのだから。
─────『愛している』と伝えたら
お前は一体、どう応えてくれるのだろうな?
「謙信様はここの部屋を使ってください。美依さんは……そうだな」
宿の部屋に案内され、佐助が無表情ながらも少し戸惑った様子を見せた。
佐助が借りた宿は、簡素だが綺麗に整えられた質のいい宿だった。
掃除も行き届いているし、新しい畳なのか…い草の匂いがまた心地よい。
そんな中、俺用に借りた一室で佐助が口ごもっている。
多分、美依を同室にするか否かという話なのだろう。
勿論俺は同室の予定だったが、生憎俺と美依はまだ恋仲という訳では無いし……
佐助が『どうすればいいか解らない』となるのは当然だろう。
「美依は俺と同室で構わん」
「えっ……」
「何か不満か、美依」
驚いたように目を丸くさせた美依。
だが、すぐさまほんのり頬を赤らめ……
少し俯いたかと思ったら、たどたどしく答えた。