第38章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 信長vs謙信
「美依、信長に許しを得て越後に来い」
「え……?」
「向こうは既に雪深い。お前の望む"ほわいとくりすます"とやらには絶好だろう」
「……!」
「向こうで"くりすます"の宴を開く、お前が楽しめるように」
謙信の言葉に美依は丸い目をますます丸くさせる。
その意外すぎる提案にびっくりしながらも、優しい心遣いに心がトクンと音を立てた。
先程、天主でクリスマスの話をした。
またクリスマスを祝えたら楽しいけど、戦乱の世ではそれは叶わないと思っていたから……
初めからクリスマスなど諦めていたけれど、謙信はそれをしようとしてくれているのだ。
「謙信、様……」
「お前が喜ぶなら何でもしよう、だから越後に来い。どうだ、美依」
「っ、えぇと……」
「その心配には及ばん、謙信」
と、その時だった。
まるで謙信から引き剥がすように、美依の体がグイッと後ろに引かれた。
見ればそこには信長が立っていて、美依の肩を後ろに引いたようで。
信長はその赤い目を細めて謙信を見据えると、腕に美依を囲いながら当然といったように言った。
「美依の越後行きは許可せん。美依は俺と"くりすます"を祝うのだから」
「信長様っ……!」
「ほう……面白い、斬り合いで決着をつけるか?」
「それも愉快だが、ここは美依に決めさせるのが道理だろう」
二人の視線が美依に向けられる。
まさかの展開に、美依はしどろもどろで俯いた。
まさか信長までクリスマスを祝うことを考えてくれていたとは。
何気なく口にしたクリスマスの話。
それを二人は真剣に考えてくれているようだった。
それは素直に嬉しいし、どちらの気持ちにも応えたい。
しかし……空気的にどちらかを選ばなくてはならない雰囲気になっている。
「えぇと、私は……っ」
「……」
「っ……とりあえず、部屋で決めます!」
美依は囲う信長の腕から抜け出し、わっと庭から駆け出した。
そのまま廊下に上がり、ドタバタと忙しない足音を立てながら美依が走り去る。
信長と謙信はその場に取り残されて……
二人は顔を見合わせると、互いに不敵に笑った。