第38章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 信長vs謙信
その後、美依が天主から退散し、会合も一区切りついた時……
信長の向かいに座っている謙信が、天主の外を見ながらぽつりと言った。
「美依は佐助と同郷、つまり五百年後の世から来たのだったな」
「……それがどうした」
「たまには故郷を懐かしく思う時もあるだろう、そして寂しいと思う時も」
天主の外は粉雪が舞っている。
それは静かに降り積もり、世界を白銀色に染めていく。
『ホワイトクリスマスになりそう』
美依は雪を見て、嬉しそうに言った。
きっと元に居た世で祝ったように、美依は『くりすます』がしたいのだ。
宴を開いたり、贈り物を贈り合ったり……
そんな楽しい催しを楽しみたいに違いない。
『以前いた世の中では当たり前だった行事も、ここでは違うんですよね』
当たり前が当たり前でなくなってしまった。
それは美依にとって、どれほど寂しかったことだろう。
ならば……美依が寂しくならないように、少しでも楽しませてやることは出来ないだろうか。
信長と謙信は二人して同じ事を考えていたが、やがて謙信は傍に控えさせていた佐助を天主に呼んだ。
「お呼びでしょうか、謙信様」
「お前に少し尋ねたいことがある」
「はい」
「"くりすます"について、詳細を教えろ」
「え……?」
主君から現代の言葉を聞くとは。
佐助は驚いて、少しだけ目を見開いた。
その後、佐助による『くりすます講座』が開かれ、信長と謙信は真剣にそれを聞いていた。
外は雪、白い天使が舞い降りる。
それは十二月二十日のことだった。
*****
「─────美依」
「……謙信様?」
会合が終わり、天主を後にした謙信は庭先で雪を眺める美依に声を掛けた。
……頬が赤くなっている、このように寒い場所でどのくらい雪を眺めていたのだろうか。
謙信がその冷たくなった頬に指を這わせると、美依はぴくっと肌を震わせて目を瞠る。
そのまま謙信は、会合中にずっと考えていたことを美依に『提案』した。