第38章 【戦国Xmas2022】聖夜に煌めく想い / 信長vs謙信
「貴様、女嫌いではなかったのか」
「お前こそ、第六天魔王とも呼ばれる男が女にうつつを抜かすか」
「生憎、美依は俺の持ち物だ」
「ふっ……言っていろ」
視線が絡み合い、静かに火花が散る。
互いに美依を好いているのは明確で……
だからこそ、相手には譲れない。
『美依は俺のものだ』と、眼差しが全てを物語っていた。
寂しがっている美依に笑顔を。
"くりすます"を祝うことでそれが叶うなら、それは実行してやらねばなるまい。
二人の心に思うのは、ただそれだけで。
美依がどちらを選ぶのか、それは解らないけれど、出来れば己を選んでほしいと……二人はそれを切に願ったのだった。
*****
─────そして、次の日
今日はもう謙信が越後へ帰る日だ。
支度を整えた謙信の傍には、佐助と数人の家臣達が控えている。
その日、信長も謙信を見送るために城門へ来ていた。
……だが、美依の姿が見えない。
「……美依はどうした」
謙信が怪訝な表情で信長に尋ねる。
だが、信長自身もどこか険しい表情で……
謙信の問いかけに、静かな声で答えた。
「あれから自室に籠って出てこない、何をしているかは女中すら把握していないな」
「それはつまり、越後へは来ないと?」
「許可はしなくとも見送りには出てくるとは思っているが……美依がどうしたいかも結局聞けぬままだな」
信長の返答に謙信は眉を顰める。
越後へ行くか行かないか迷っているのか。
あの美依の性格上、行かないならば『行けません、ごめんなさい』と自ら言いに来るだろう。
もし越後へ来るとなれば、旅支度をして姿を見せるはずだ。
一体美依は部屋に籠り何をしているのだろう。
行くのか否か、その返事だけでも聞きたい所だが。
「謙信様、そろそろ」
すると、家臣の一人が謙信に声を掛けた。
姿を見せないと言う事は、やはり越後へは行かないと捉えて良いのかもしれない。
謙信はそう思い直し『解った』と返した。
そのまま佐助達が信長に一礼をする。
謙信も名残惜しいと思いながら、安土城に背を向けようとした。
────その時だった。