第37章 〖誕生記念〗焦れる想いを濃紺の冬空に咲かせて / 徳川家康
「美依……本当に、ごめん」
俺がようやくその言葉を声にすると、美依はそこでやっと俺の方に向き直った。
花火に照らされるその顔は、少しだけ目を見開いていて……
俺はその顔を見ながら、ずっと胸に秘めていた気持ちを口にする。
「あの日は俺、どうかしてた。余裕なかったし、あんたが足りなくて飢えてたから」
「家康……」
「触れ合う事でも満たされるけど、あんたが笑顔で傍に居てくれれば、それだけで満足なのに。なのに、あんな傷ついた顔をさせた。それは…自分が辛いよりもっと堪える」
「っ……」
「────だから、笑って俺のそばに居て」
ドォンッッ………!
煌めく、炎の花。
俺の気持ちも、燃えて火花を散らす。
花火のように綺麗ではないけれど……
熱量では負けはしない。
美依を想う気持ちは、
鮮やかに俺の人生すら照らすんだ。
「いつでも、いつまでも俺の隣で笑っていてほしい。もっとあんたの心を大切にするって約束する。美依、あんたを…誰よりも愛してるよ」
やっと言えた言葉。
ほんの少しの素直さと、勇気。
それは、あんたが教えてくれた事だ。
口を噤む美依。
顔は少しだけ赤く染まっていて。
そんな顔も可愛いな、なんて場違いに愛しさが生まれる。
美依はそのまま俯き、そして……
「………!」
ふわり、と俺の胸に飛び込んできた。
久しぶりに感じた美依の温もりに、ドクンと心ノ臓が高鳴る。
背中に回された腕で、ぎゅっと引き寄せられ…
美依はそのままの姿勢で、切なげに言葉を紡いだ。
「私の方こそ、ごめん…家康」
「美依……」
「あの日、家康がすごく求めてくれてたの解ってた。私も…寂しくて、ずっと家康に触れてほしかったから本当は嬉しかったの。でも、拒んだのは月のモノのせいだけじゃなくて……」
「え……?」
(どういう意味だ……?)
俺が若干不思議がると、美依は胸元から顔を上げてくる。
その顔は目が潤み、頬は染まり。
どことなく煽情的な顔つきに、また鼓動が跳ね上がった。