第37章 〖誕生記念〗焦れる想いを濃紺の冬空に咲かせて / 徳川家康
でも───………
それは、美依には解らないらしい。
「本当に今日はだめ…我慢して」
美依は起き上がろうと、俺の身体を押しのけた。
甘い空気になりそうな気配はどこへやら。
だが、その態度が妙に癪に障った。
『どうにかなりそう』とまで言っているのに。
本当に少し触れ合うだけでいいのに…
やっぱり、今日の俺はどこか余裕がないらしい。
その尖った心は剥き出しになり、気がつけば俺は起き上がった美依を再度褥に組み敷いていた。
「……家康!」
「最後まではしないって言ってるでしょ、そんなに俺は信用ならない?」
「そういう意味じゃなくて……」
「じゃあ、どういう意味なんだよ!」
「っ……」
我慢に我慢を重ねて…
火照る身体を持て余し、自分で鎮める事もしないまま帰る日だけを待ち焦がれて。
辛い、本当に辛い。
それを、美依は解っていない。
全然、俺の気持ち、解っていない。
狂 ウ ホ ド
愛 シ ク テ 恋 シ イ ノ ニ。
「んっ……!」
俺はそのまま、また美依の唇を塞いだ。
荒々しく絡め取って、美依の味が口内に紛れ込んだら、身体が途端に熱を帯びた。
そう、この相手を感じて高ぶる感じ。
それをずっと味わいたかった。
この腕に美依を閉じ込めて、ぐずぐずに溶かして…
そして、崩れゆく様を見たかった。
手を次第に身体に這わせていく。
美依の身体も若干火照ってるみたいだ。
可愛い、本当に俺の美依は可愛い。
あんたで満たしてよ、俺を。
飢えて渇いた分、たくさん潤して。
すると、美依は俺の身体の下でもがき…
やがて。
────パチンッ!
瞬時に響いた音と、頬に走った痛みに、俺は目を見開いた。
美依を見れば、涙目になって、怒りを堪えるような表情で俺を見上げていて…
『しまった』と思った時には、もう遅い。
美依は俺を睨みながら、さっきより力強く俺を押しのけ、そして立ち上がると震える声で言葉を紡いだ。