第37章 〖誕生記念〗焦れる想いを濃紺の冬空に咲かせて / 徳川家康
「んっ…んぅ……」
するりと唇を割って舌を忍び込ませて、美依のそれと絡める。
舌の付け根とか上顎とか、舌先でくすぐったりしながら口内を嬲った。
そうすれば、美依は気持ち良さそうに顔を蕩かし始め、一生懸命応えてきて。
そんな姿に、心の柔らかい部分を崩された。
これはもう、ここから先に進んでいいと言う事だろう。
衝動に突き動かされ、俺はそのまま美依を褥へと運ぶ。
ふわりと身体を布団に降ろし、上から覆いかぶさって…
そのままがっつきたい気持ちを堪え、優しく接しようとまた首筋に顔を埋めると。
「……っ待って!」
「え……?」
急に肩を掴まれ、引き剥がされた。
驚いて顔を見れば、何か言いたそうに必死に見つめている。
……もしかして、拒まれたのか?
がっつきそうになったのを悟られたのだろうか。
俺が若干首を傾げると…
美依は『ごめんっ』と勢いよく謝り、なんだか少しだけ切なそうに言葉を続けてきた。
「家康、やっぱり今日は無理…っ」
「眠いんだよね、ごめん。でも俺…あんたをもっと感じたい。離れてた時間を早く埋めたい」
「家康の気持ちもすごく解るし、少しならとも思ったけど…でも、やっぱりだめ。あのね、眠いんじゃなくて……」
「……何?」
「……っ」
口籠もる美依は、一瞬視線を逸らし。
そして、また見つめてきた時には若干目が潤んでいた。
そんな煽情的な顔して、無理な理由って何?
美依の言葉を待っていれば…
美依はものすごくいいにくそうに、小さな声でぽつりと言った。
「月のモノの、最中…なのっ……」
(あ……)
それを聞き、思わず目を見開く。
『月のモノ』、それは女が子供を産む身体故に、毎月避けられないもので…
病気なども移りやすいことから、その期間の性交は絶対駄目だというのが常識だ。
それならば『無理』というのも解る。
美依が病気になったら大変だし、その期間の女は体調がすこぶる悪いとも聞く。
だったら今夜は仕方ない、諦めるしか…と自分の心を納得させようとするのだけれど。
「……っ」
中途半端に高ぶった身体がまた疼き…
俺は思わず顔を背けて、唇を噛んだ。