第37章 〖誕生記念〗焦れる想いを濃紺の冬空に咲かせて / 徳川家康
「知ってる、会いたかったって顔に書いてあるから」
俺が草履を脱いで上がり、美依の額をちょんと指でつつくと、美依は少しはにかんだように笑んでみせた。
ああ…可愛いな、久しぶりの笑顔だ。
それを見ただけで、渇き切った心が少しだけ潤う心地がする。
(でも…もう、まずい)
心が潤うと同時に、身体がじくりと疼いた。
内側から広がるように、腰が熱を持ち始め…
それはだんだんと俺を侵食していく。
本当にもう限界かも。
そう思った時には、美依の手を引いて足早に廊下を歩き始めていた。
「家康……?」
俺の様子が少しおかしいのに気がついたのか、美依は手を引かれながら俺の名前を呼んだ。
だが、そうやって名前を呼ばれるだけで、息が詰まるほどに苦しい。
早く、早く触れたい。
この子の温もりを存分に感じたい。
甘い匂いを吸い込んで、柔らかな身体に手を這わせて…
そして濡れた奥底まで堪能したい。
その思いで早々と自室に到着すると。
俺は美依を部屋に押し込み、襖を閉めるとすぐさまその小さな身体を抱き締めた。
そして、首筋に顔を押し当て、匂いを思いっきり吸い込む。
さすれば、美依も俺の背中に腕を回しながら、少し不思議そうに尋ねてきた。
「家康、どうしたの……?」
「……あんたを補充してる」
「え?」
「もう俺の中のあんたが足りないから。ひと月も離れてて…美依欠乏症になった」
今日ばかりは天邪鬼も大人しいようで。
するりと本音を零せば、美依は小さく『ふふっ、そっか』と笑った。
……本当に笑い事じゃないんだけど。
身体の中の栄養が足りないみたいに、俺の中の『美依』が少なくなったら、ものすごく辛かった。
回した手を動かし、腰から背中を優しく撫でる。
その柔らかな熱が俺に安心を与えると同時に、心に燻る火をさらに燃え上がらせた気がした。
すぐ、今すぐに美依を抱きたい。
そう思い、美依の身体をひょいと抱き上げ…
横抱きにしたまま、美依の唇をやや強引に塞いだ。