第36章 【戦国Xmas2020】明智光秀編
「この"くりすますぷれぜんと"はお気に召したか?」
「当たり前です!本当に…ありがとうございます」
「喜んだなら、それでいい」
「私、左手の薬指に指輪をはめてくれる日を待っています。その日までに…もっといい女になりますから」
「そうか、それは楽しみだ」
光秀さんは、こつんと額同士をくっつける。
ああ、こんな風にしてもらえて幸せだ。
なんて素敵なクリスマスなんだろう、贈り物までもらえて…
だが。
そこまで考えて、私は気がついた。
そして、サーっと血の気が引いた。
私はこんな素敵な贈り物をもらったのに…
私自身は光秀さんへの贈り物が間に合わず、用意出来なかった事。
(私のばかばかばかばか!)
激しく後悔が襲ってくる。
これならもっと早くに準備するんだった!
思わず、どんより暗くなってしまうと…
私の異変に気がついた光秀さんが、少し不思議そうに尋ねてきた。
「……どうした」
「私…光秀さんへの贈り物、準備出来なかったんです。クリスマスを一緒に過ごせると思わなかったので、逢瀬に間に合わなくて…ってこれは言い訳ですね」
「……」
「本当にごめんなさい、光秀さんはこんな素敵な贈り物を用意してくれていたのに」
ああもう、私って酷い奴だ。
いい女になるって宣言したばかりなのに…そんなのはまだ程遠そう。
しゅんとうなだれてしまうと、光秀さんが小さくため息をついたのが解って。
やっぱり呆れられたんだ。
そう思ってますます心が沈む。
だけど、光秀さんは私を抱く腕に力を込めて。
今度は耳元に唇を寄せて、甘く囁いた。
「……贈り物は、お前自身だろう?」
「え……?」
「さんたくろーすも贈り物が欲しい、一番欲しいのは…お前だ、美依」
「……っ」
「一番欲しい贈り物を贈ってくれるな?」
────そんな事、当たり前です
言葉の意味を理解し、恥ずかしくても…
貴方が欲しいと言うなら、私は喜んで贈りますよ。
『私自身』を、貴方の為に。
それは私が、身も心も貴方の物だからだ。
奪われて、愛でられて、私はもう貴方しか見えないのだから……
もっと、貴方に差し出したいと。
それこそ髪の一本、血の一滴まで。
貴方に染められたいと、願うのだ。