第36章 【戦国Xmas2020】明智光秀編
────え?
その時指に感じた感覚に、私は思わず目を開いた。
目を開ければ、とても優しく微笑む、赤い着物を着た光秀さん。
私が視線を少し降ろしてみたら…
繋いでいた『右手』の薬指に鈍く金色に光る指輪がハマっていたのが解った。
「光秀さん、これっ……」
「今年の"くりすますぷれぜんと"だ、俺は"さんたくろーす"だからな」
「指輪……」
「ああ、真鍮で出来ている。堺で手に入れたものだが、異国では恋仲の女に指輪を贈る風習があるそうだな。まあ…本来ならば"左手"だとは聞いたが」
光秀さんは私の手を恭しく持ち上げ…
そして、そっと指輪に口づける。
柔らかな温もりを感じ、一瞬にして肌が熱を帯びた。
声も出せずにいれば、光秀さんはそっと啄み、指から唇を離して…
『右手に指輪をはめた理由』を説明してくれた。
「俺はこれからもお前に寂しい思いをさせるだろう。しかし利き手にはめていれば、必然的に視界に入る事も多いはずだ。寂しい時はそれを見て、俺を思い出せ」
「光秀さん……」
「そして、俺はまだお前の左手の薬指に指輪をはめてやれる程、立派な男ではない。だが、いつか…必ずはめてやる。それまで待っていてくれるか」
「っ……」
「────愛しているよ、美依」
(ずるいよ、こんなの……っ)
貴方はいつだって、私に大きな愛をくれた。
確かにたくさんの壁があり、色んな障害あって…
それでも二人で乗り越えてきた。
光秀さんは、甘っちょろい私に乱世で生きる厳しさを教えてくれ、そして……
いつでも温かい愛で包んでくれたんだ。
────私も、貴方を愛しています
それは、言葉にはならなかった。
代わりに、その胸に飛び込む。
思いっきり広い胸元に飛びついて、背中に回す腕にぎゅうっと力を込めた。
すると、光秀さんは頭の上で小さく笑って。
私の身体に腕を回し、優しく包み込んで言った。
「泣き虫め」
「……っ光秀さんの、せいです」
「そうか、でも…お前を泣かせるのも、その後笑顔にしてやるのも、俺だけの特権だろう?」
「は、い……」
私は何とか光秀さんの胸元から顔を上げる。
そして、泣き笑いになって光秀さんを見つめれば…
光秀さんは、とても愛おしげに笑っていた。