第36章 【戦国Xmas2020】明智光秀編
「……美依」
「はい」
「やはりここに来たからには、口づけをしなくてはな?」
「そ、そうですね……」
すると、光秀さんからいきなりその話題を振られ、思わずどもってしまった。
口づけなんて、それこそたくさんしてきたけど…
改めてそう言われると、なんか照れてしまう。
光秀さんはそれを察したのか、私の方に向き直り、いつものように意地悪な笑みを浮かべる。
そして、繋いでいる手とは反対の手の指で私の頬に触れ…
艶やかな低い声で、囁くように言った。
「いつも"それ以上"の事もしているだろう?」
「そ、それはそうですけど…」
「けど、なんだ」
「口づけは結構特別って言うか…何回しても照れるし、慣れないものなんです。愛情の証みたいなところ、ありますし…」
(我ながら、子どもっぽい事言ってるなぁ)
口づけと言うものは、すごく愛情が籠ると言うか、自分の中でも割と『重要』なもので。
軽々しくは出来ないし、むしろ好きな人となら余計に愛を感じて、慣れるものじゃないと言うか…
でも、光秀さんはまだまだ小娘だなぁとか思ったかもしれない。
そう思い、少し俯き気味の視線を光秀さんの方に向けると、光秀さんは若干目を瞠(みは)り。
やがて、穏やかに琥珀の瞳を緩めた。
「お前と言う娘は…本当に愛らしいな」
「そ、そんな事はない、です……」
「そう言われると、余計に口づけたくなる」
「……っ」
「照れるなら目を瞑れ、その間に俺がする」
(……めちゃくちゃ恥ずかしいんですが!)
いきなり口づけられるより、宣言される方がもっと恥ずかしい。
それでも、口づけしたくない訳じゃない。
むしろ、光秀さんとはたくさん口づけしたいし、たくさん口づけてほしい。
私は小さく頷き、少し顔を上げて目を閉じた。
どのタイミングでされるのかな。
目を開けていれば、顔が近づいてくるのが解るけど…
それを思い、心臓が早足になる。
ドクドクと強く早く鼓動が打っているのを感じられて、結んでいる唇まで震え出した。
口づけひとつでこんなに緊張して…
私はどれだけ光秀さんが好きなんだろう。
すると、光秀さんは握る手を少しだけ上に上げて、私の手を下から持ち上げるように握り直した。
その、瞬間だった。