第36章 【戦国Xmas2020】明智光秀編
「わっ…雪だぁ…!」
一歩御殿から出てみれば、空からは粉雪が待っていて、地面をほんのり白く染めている。
一年前の今日も、こうして雪が降っていた。
なんか去年のリプレイみたいだな…と思っていれば、やっぱりあの日のように光秀さんが握った手の力を優しく強める。
「足元が滑るから、気をつけろよ」
言葉も、冷たい指先も、あの日と同じ。
状況も何もかも一緒だけれど、決定的に違うのは…
私達が『恋仲の関係』と言う事だ。
あの日より、もっと近づいてる。
気持ちも、距離も、何もかも。
それが嬉しくて……
私は光秀さんの手を握り返しながら、愛しさで心が潰れそうになっていたのだった。
*****
「宿り木、一年前と変わらずですね!」
「そうだな、懐かしい」
目的の丘に到着し、私達は去年のように二人で高い木を見上げた。
葉の落ちた高木の上の方で、緑の玉のようになっている。
そこに雪がほんのり積もって、キラキラしていて…
まるで一年前の再現を見ているようで、私は懐かしんで目を細めた。
『それで?この木の下で、お前はどうされたいんだ?』
『それ、は…』
『口づけ、だったか。答えなければ、するだけだぞ』
『っ……』
その瞬間、ふわりと唇に落ちてきた温もり。
次に紡がれた言葉は───………
私を、さらに光秀さんしか見えなくさせた。
『────お前の事を、愛している。
くりすますの贈り物として…
俺の気持ちも、受け取ってくれないか』
(……あれから、もう一年経ったんだ)
光秀さんとは、本当に色々あった。
傷つく事も、泣くことも。
でも…
貴方はいつも私を癒してくれ、涙を拭ってくれた。
そして、今こうして一緒に居る。
時を駆け、命儚い乱世でこうして気持ちを通わせる事ができたのは、本当に奇跡だ。
五百年前の宿り木を『明智光秀』と一緒に見て、まさかクリスマスを一緒に祝うなんて…
本当に、人生はどう転ぶか解らない。
それでも、私は思う。
最初は『奇跡』からの始まりでも、掴んだ運命はやはり『必然』だったのかもしれないと。
私はこうして乱世に飛ばされ、光秀さんに出会って…
きっと、恋する事も『必然』だったと、そう思う。