第36章 【戦国Xmas2020】明智光秀編
(本当に、楽しみだなぁ)
私はその日、逢瀬の事を思うだけで気分はうきうきで、届け物の足も羽が生えたように軽かった。
光秀さんと恋仲として迎えるクリスマス。
自分の恋人とクリスマスに逢瀬をするなんて、現代でも無かった私だったから…
色んな期待が入り交じって、心もふわふわと浮き足立っていたのだった。
*****
「化粧は…これでいいかな、髪型も…」
届け物から帰ってきて、その日の夜。
私は御殿で逢瀬のために身支度を整えていた。
普段は化粧なんてあまりしないけど、せっかくの逢瀬だし、たまにはきちんとしたい。
髪も編み込んで、簪を挿す。
あまり凝った髪型は出来ないけれど、それでも女らしい髪型になったかな…とは思う。
光秀さんと逢瀬出来るのが嬉しくて、準備に余念が無い。
初めての逢瀬でもないのに、私って単純だな。
でも───………
急な逢瀬の約束だったので、クリスマスプレゼントまでは準備が出来なかった。
中途半端なものはあげたくないし、出先帰りにお店も寄ってみたけれど、イマイチこれといって心惹かれるものがなかったのだ。
(もっと早めに準備しとくんだったな、トホホ)
光秀さんは忙しいから、クリスマスは一緒に楽しめないと、はなから決め込んでいた。
でも、せめて贈り物くらいは用意しておけば良かったな。
若干の後悔を残しつつ、鏡に自分を写して小さくため息をつくと…
「────美依、準備は出来たか」
「!!」
襖の外から声が掛かった。
光秀さんの声だと、それを認識し、私は鏡台の前から立ち上がると…
少しだけ緊張した面持ちで、襖を開く。
「光秀さん、お待たせしま……」
そこに居るであろう光秀さんに声を掛けつつ、襖を開いた瞬間。
私は光秀さんの格好を見て、思わず目を見開き、言葉を詰まらせた。
光秀さんはとても派手な赤い着物を着ていた。
色味自体は落ち着いた赤だけれど、色素の薄い光秀さんが着ると、やたらと色が際立って見える。
そもそも、今までこんな色の着物を着ていたのを見た事がないし…
私が思わずつま先まで舐めるようにまじまじと見てしまうと、光秀さんはふっと不敵に笑みを浮かべ、口を開いた。