第1章 【ドリノベ内企画】路地裏アンアン in 光秀 / 明智光秀
(本来なら、こういう時は褒美をやるものか)
信じてくれた礼と、不安にさせた詫びと。
優しい気持ちに、褒美をくれてやらねばならないのだろう。
ただ──……
俺はひねくれ者で、お前に意地悪をするのが好きだから。
こういった場合も、素直に褒美をやれない。
折角なら、もう少し刺激的で、悦ぶような。
────そんな、蜜の味を教えてやりたい
「だが、美依。お前は確かに可愛らしいが、悪い子だ」
「え?」
「常識的に考えて、立ち聞きするのは悪い子だぞ」
「だ、だって……!」
「悪い子には……」
そのまま、美依の両手首をやんわり掴む。
そして、それを顔の横で壁に押さえつけ……
まだ赤い顔を覗きながら、俺は意地悪く目を細めた。
「お仕置きが必要だな……そうだろう?」
囁いた途端、俺とは対象的に、美依の黒真珠の瞳が大きく見開かれる。
瞬きも忘れたように、見つめ合い。
その揺れる黒目がちの瞳は、なんだか熱が籠っているように感じられてきて……
『一体…何を期待している?』
そう言ったら、美依は図星を指されたかのように、顔を思いっきり引きつらせた。
「き、期待なんか……!」
「おや、その割には熱っぽい眼差しだが」
「そ、そんな事ないです!大体、お仕置きって…私は光秀さんを心配して!」
「お前が心配してくれたのは解った。俺は一般常識の話をしているんだ。勝手に人の話を立ち聞きするなど、内容はどうであれ、それは常識知らずだろう。違うか、美依?」
俺の『正論』に、美依は悔しそうに唇を噛む。
俺は嘘は言っていない、最も正しい意見しか述べてないぞ?
これなら『お仕置き』する理由になる。
『お仕置き』として、美依を存分に可愛がることが出来るからな。
それは、甘い甘い罠。
どうせなら──……
抜け出せなくなるほど、ハマってしまえばいい。
「あっ、ちょ…光秀、さん…?!」
俺が美依の細い両手首を一つにまとめ上げ、頭の上で固定すると、美依は焦ったような声を出した。
腕が持ち上がる事で、袖がするりと落ち……
姿を見せた白い二の腕が、やたら艶めかしく見えて、思わず背筋がぞくりと疼いた。