第1章 【ドリノベ内企画】路地裏アンアン in 光秀 / 明智光秀
(……だが、俺を信じるお前に、嘘はつけないな)
何故か、そんな風に思う。
嘘が似合わない、お前だからか。
いつも、真っ白でいて欲しいと思うからか。
なんにせよ、誤解は解いてやらねば。
何故だろうな、俺は。
────お前だけは、裏切りたくない
「あの奇襲計画は、嘘だ」
「え?」
「謀反人を欺くためのな」
俺はそのまま、美依に事の次第を全て話してやった。
奇襲にかこつけて、捕まえるつもりなのも。
相手を信じさせるために、味方のフリをしていることも。
すると、美依は驚いたように数回瞬きをし…
やがて、安堵したように小さく息をついた。
「なんだ、そうだったんですね!」
「安心したか?」
「はい…ちょっと怖かったんです。光秀さんが危険な事をしてるんじゃないかって…不安で」
「美依……」
「でも、あんまり危ない事はしないでくださいね。信じていても…光秀さんに何かあったらと思うと、すごく不安ですから」
(何故、そのようにお前は……)
少し困ったように眉をひそめる美依を見ながら、少し心がざわつく。
お前は何故、素直に俺を信じる?
人を欺くことで、裏の仕事をするのが俺の生き方だ。
故に自分に敵は多い、それは重々に自覚している。
だから『信じる』といった感情は、一番俺には無縁だ。
だが、お前は──……
そんな俺をなんの見返りもなく信じてくれているのだと。
それが解って、思わずくすりと苦笑が漏れた。
「な、なんで笑うんですか……」
「お前は馬鹿だなと思っただけだ」
「ば、ばかじゃないです……!」
「いや、愚か者だ。だが……」
気がつけば、自然に手が伸びていた。
その白い頬に、滑らすように……
指の背で、優しく肌を撫でる。
そして、自分ではないような、甘く優しい声が出た。
「そんなお前は、呆れる程に可愛いな」
「……っ」
俺の言葉で美依の顔が赤く染まる。
そんな姿も、馬鹿みたいに愛らしい。
『ただの小娘』に抱く感情にしては、やたら甘くて熱いと。
そんな風に思って……
内心、少し動揺しながらも、いつものような底知れぬ笑みを作った。