第34章 〖誕生記念〗長い一日の終わりに温もりを寄せて / 石田三成
少しだけ、肌に感じる風が冷たい。
季節は秋、もう…冬も近いかもしれないな。
「ん……?」
ぼんやり目を覚ますと、まだ夜は明けていなかった。
背中に感じる空気が冷たく感じられ、思わず身を縮めると…
私の腕の中で丸くなる美依様が、無意識のように小さくクシャミをした。
(寒い、ですかね……)
布団を改めて肩までかけ直し、そしてぎゅっと抱き締める。
すると、暖かさを感じたのか…
美依様の身体から強張りが抜け、また私にくっつきながら穏やかに寝息を立て始めた。
……可愛いなぁ。
一糸まとわぬ姿で眠る美依様は、どこかあどけなく、昨夜見せた色香のある姿が嘘のようだ。
二晩続けて抱いてしまって。
美依様、お身体が辛くないと良いのですが。
そう思っていると、頭の上から『にゃー…』と小さく聞き覚えのある鳴き声が聞こえてくる。
視線だけ動かせば、枕元には灰色のふかふかな毛並み。
私は人差し指を立て、唇に押し当てると…
そのふわふわに向かって『しー』っと息を吐いた。
「……ねこさん、美依様が起きてしまいますから、静かにしましょうね?」
「にゃう……」
「ごめんなさい、ねこさん。今日は褥に隙間がないのです、また一緒に寝ましょう」
そう言えば、ねこさんは足音も立てずに障子の隙間から、部屋を出ていく。
ねこさんも寒かったかな?
今度私が一人の時に入れて上げますね。
ちょっと罪悪感もあるが、今は…
「…美依様を堪能したいのですよ」
穏やかに眠る美依様を見ながら、ぽつりと呟く。
こんな無防備な貴女を独り占めできるのは、恋仲である私の特権だから。
昨夜、誕生日を祝ってもらって…
『贈り物』である貴女を、まだまだこうして抱いていたい。
本当に、愛しているから。
この命、尽きるまで…
生涯を通して、全力で愛し抜きたい。
首筋を見れば、そこにはまだ赤い華が咲いている。
私が激情に駆られ、付けたその独占欲。
それを指でなぞり、また唇を押し当てた。
────激しい感情も、全て貴女のものだ
貴女が私のものであると同時に。
私の全ても貴女のものですよ。
互いに囚われ、絡み合って、そして…
また愛情を持って『幸せ』を作っていく。