第34章 〖誕生記念〗長い一日の終わりに温もりを寄せて / 石田三成
「まぁ…夜の宴では絶対会えるだろ」
すると、政宗様が私の肩に優しく手を乗せた。
宴が今夜あるのか?
何の宴だろうか、そんな話は聞いていないが…
「今夜、宴があるのですか?」
「あるぞ。お前、晴れ着を着てこいよ?」
「……?かしこまりました」
(晴れ着を着る程、重要な宴…?)
諸国の大名でも、宴に来るのだろうか。
何も聞かされていなかったが、確かに宴の席ならば美依様には確実に会えるだろう。
でも、本音を言えば…夜になる前にあの方に会いたいのですがね?
「じゃあ、三成。また後でな」
「くれぐれも宴に遅刻するなよ」
「政宗様、家康様、また後で」
色んな疑問を抱えたまま、私はお二人と別れる。
そのまま信長様に報告に向かおうとして…
ふと中庭を見れば、紅葉した木から、鮮やかな葉がひらりひらりと散っているのが見えた。
────季節は、巡りますね
あの方が信長様を本能寺でお助けして、城に住まうようになってから…安土城の空気は変わった。
光が差したように明るくなったし、私は…
あの方から目が離せなくなり、恋をした事に気がついた。
いつしか時は巡り、恋仲となって…
私は戦術書では解らない、色々な感情を知った。
全て美依様が教えてくれた事だ。
穏やかで優しい心も。
滾って飢えていくような渇望も。
そして…それが満たされるような充実感も。
私はあの方が好きだ。
好きで好きで好きで堪らない。
だから───………
会えない今日は、とても寂しい。
(朝も思ったけど…溺れていますよね、私)
もう美依様無しではいられない。
あの方の魅力の虜になってしまったから…
いつでもこの腕に抱いていたいと思ってしまう。
夜になるまでに、会えるだろうか。
会えなかったら…それこそ寂しいなぁ。
昨夜抱いた温もりを思い出すように、そっと胸に手を当てて目を瞑る。
瞼の奥には、愛しい人の色んな表情が焼き付いていて…
早く、早く本物の貴女に会いたい。
少しばかりの感傷に浸りながら、私は思わず苦笑を浮かべてしまったのだった。
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