第34章 〖誕生記念〗長い一日の終わりに温もりを寄せて / 石田三成
「三成、下向いて歩いてると危ねぇぞ」
「あ、政宗様。申し訳ありません」
「全く…いつも秀吉さんに注意されてるんだから、気をつけろよ」
見れば、ぶつかったと思われる政宗様の隣には家康が居て、若干呆れたような溜め息をついている。
しまった、いつも秀吉様にも言われているのに、家康様にまで心配をかけてしまったか。
考え事をしながら歩くのは駄目だと解っていても、どうしても美依様の事が気になってしまう。
家康様にも『すみません』と謝ると、家康様は『別に』と短く答えた。
(あ、でも…)
お二人なら美依様が今どこに居るか知っているかもしれない。
どこかで見かけたとか、そんな情報だけでも聞く事が出来れば、会いに行けるかも。
ふっとそんな事を思い、私は思わず前のめり気味に政宗様と家康様に問いかけていた。
「あの、美依様を見かけませんでしたか?」
「ん?美依なら…」
「…政宗さん、言ったら駄目です」
「あ、そうだよな。悪い」
なんだ、何やら意味深な言葉だが。
お二人は美依様が今どこに居るか知っているのだろうか?
私が思わず首を傾げると…
政宗様はにやりと不敵な笑みを浮かべ、私の顔を覗き込んでくる。
「三成、今日は何月何日だ?」
「ええと、十一月六日…ですね」
「今日は何の日か解るか?」
「……何かありましたか?」
「やっぱり…忘れてますよ、政宗さん」
「だなぁ、美依の言ってた通りか」
家康様の言葉に、苦笑いを浮かべる政宗様。
そして二人で顔を見合わせ…二人してまた小さく溜め息をついた。
(忘れてるって…今日は何かありましたっけ)
特に何かの特別な日ではなかったはずだ。
普通の日常の日…だったと思うのだが。
それよりも今は美依様の居場所だ。
この口ぶりだと、お二人は知っていそうな気がするのだけど。
「今日、美依様と全然会えていなくて、もし居場所が解るなら教えていただけませんか?」
「なんだ三成、美依に会えないから、俯いて歩いてたのか?」
「…少し、寂しいなぁと思っていたので」
少しだけしょんぼりとしてしまう。
だって…朝から恋仲の相手に会えないなんて、寂しいしかないから。