第33章 〖誕生記念〗彩愛-甘やかな嘘- / 明智光秀
(……しまった、これは想像以上に参る)
どうしてこの娘は、俺の考えの遥か上を行くのだろう。
もう何も言えない、その言葉を聞いて…
心が昂らない方が、おかしい。
「……美依、先を急ぐぞ」
「わっ……!」
俺が短く言葉を掛け、馬を再度走らせると、美依は少しだけ驚いたような声を上げて俺にしがみついた。
先程よりも、加速して…
速く馬を走らせ、御殿へ急ぐ。
『欲しい』と言う気持ちは、抑えきれない。
もう、すぐにでも愛しい女を感じたくて…
俺は一目散に、馬で駆けた。
────本当に、お前には敵わない
俺と出会った事で、美依が幸せになったなら。
この血塗られた手が…
今、お前を幸せに出来ているのだとしたら。
俺はまだ少しだけ価値があるのかもしれない。
『自分を大事にしないから』
美依は文にそう書いていた。
俺は俺自身に価値を見い出せてはいない。
それでも、お前は俺に『人を幸せに出来る人だ』と言う。
それならば───………
お前を幸せにしてやらねば。
それはすなわち、
俺も幸せに満ちる、という意味だがな?
「あ……」
夜の帳が下り、御殿の自室に帰ってきて。
俺は美依を部屋に入れ、後ろ手で襖を閉めると、すぐさま美依を背中から抱き締めた。
身体が微かに震えているのも構わず、首筋に顔を埋めて、思いっきり匂いを吸い込んで。
ああ…安心する、甘い匂いだと。
それを思えば、心も身体も熱を帯びて高ぶってくる。
「光秀、さん、あのっ…」
「……どうした」
「い、いえ……」
「俺は今朝、お前から誕生日の贈り物を貰ったが…まだ、貰っていないものがあるな?」
「え……あっ……」
俺は、すーっと耳元に唇を寄せた。
そして、その耳たぶを優しく噛み…
その窪みの中に、直接甘い言葉を注ぐ。
「贈り物は…お前"も"だろう?
俺は、お前も欲しいんだが」
すると、美依は耳たぶまで真っ赤に染めた。
まったく…朝公言しておいたはずなんだがな?
俺は次第に着物越しに手を這わせ…
その柔らかさを堪能するように、手を滑らせる。