第33章 〖誕生記念〗彩愛-甘やかな嘘- / 明智光秀
「俺に嘘をつくとは…悪い子だ」
「そ、それは謝ります、ごめんなさい!」
「反省させるために、お仕置きが必要だな」
「お仕置き?!」
「それはのちに取っておくとして…今は」
「あっ……」
その首筋にやんわり歯を立てると、美依は微かに肌を震わせる。
身体をまさぐって、肌を撫でれば…
美依は朝には似つかわしくない甘い息を漏らし、俺を若干潤んだ瞳で見つめてきた。
「昨夜触れられなかった分、今少しだけ触れさせろ。大丈夫だ、立てなくなる程はしない。それをするのは…夜、逢瀬から帰ってきてからだ」
それから、美依を程よく蕩かし。
朝の空気を桃色に染めて、しばしの触れ合いの時間を堪能した。
気落ちして、直後幸せに押し上げられて。
心を揺さぶられたら、お前が欲しくなったから。
もちろん、逢瀬も楽しみであるから…
ほんの少し『意地悪』をしただけである。
こんな誕生日の始まりも悪くないなと、温かな幸せを感じる。
これもまた、美依の為せる技なのだと…
腕の中の温もりを、ひたすらに尊いと思う朝だった。
*****
それから、俺と美依は連れ立って誕生日の逢瀬に出かけた。
もちろん、美依が作ってくれた羽織を着て。
誕生日だからと言って、特別な事はしていないが。
市を見て回り、その後馬に乗って、少しだけ離れた場所にある花畑に行って。
美依曰く『特別な事もしたいが、光秀さんには当たり前の日常を楽しんでほしい』のだそうだ。
普段、諜報活動や謀反の芽を詰むなど…
美依の考える『非日常』が俺にとっての『日常』である。
それでも、愛する者と出かけたり、ささやかな幸せを感じる事。
それも今の俺にとっては大切な『日常』だ。
美依と出会わなければ、それは一生実感する事のなかった日々だと今でも思う。
それを知れた事は、幸か不幸か。
俺は…『幸』の方だと思うのだ。
(お前が、俺を光の元へ連れ出してくれた)
暗躍し、影の生き方をする俺に…
幸せを感じる事を『当たり前』にしてくれたのは。
美依、お前なのだから。