第33章 〖誕生記念〗彩愛-甘やかな嘘- / 明智光秀
「その、あまり体調がすぐれないので、今日は少し離れて寝ますね。光秀さんに移したらいけないし、万全の体調で逢瀬をしたいので…」
「……そうか」
「一緒に寝たいのが本音なんですけど…本当にすみません」
「いや、それは仕方ないだろう。気にするな、もう一組褥を用意する」
そう言って、俺は敷いてある褥より少し離れた所に、もう一揃え褥を準備した。
今日は美依を抱いて眠れない。
本当ならたっぷり甘やかして、一緒に過ごしたかったが。
体調が悪いならば、それは仕方ないだろう。
だが───………
(………なんだ、この気落ち具合は)
やたらがっかりしている自分がいる。
贈り物が間に合わないと言われたせいか。
それとも、一緒に褥を共に出来ないからか。
……多分、両方だろう。
こんなに気落ちするのも珍しい。
自分の予想通りにならなかったからか。
それにしたって…何やら落ち込むな。
「ゆっくり休め、おやすみ」
「んっ……」
褥に入る前に、俺は一回美依を抱き締め、その唇に温もりを落とした。
深くは絡めずに、軽く啄んで離す。
でもそれだけで瞳を潤ませる美依に…
口づけるんじゃなかったと、少しばかり後悔を覚えた。
「そんな顔をするな、体調悪いのだろう?」
「……はい」
「いい子はさっさと休め、俺も寝る」
それでもその動揺を悟られないように、美依を寝かせて自分も褥に入る。
今日は、なんだか閨が広いな。
しかも冷たい…などと感じながら目を閉じた。
いつもは美依が隣に寝ているから温かいし、不思議と安心するし。
美依の温もりは一種の安定剤だから。
それが無いのは、些か寂しいな。
そう思いながら、小さく息をつく。
この程度で気落ちしてどうする。
贈り物など、誕生日に間に合わなくてもいいし。
具合が良くなれば、いつでも抱けるのだから。
そうがっかりせずとも良いはずだ。
今こんな風に気持ちが落ちるのは、きっと…
(美依が、俺の生まれた日を
大切だと喜んでくれるからだ)
いつから"大切"になったのだろう。
昔の俺なら、何とも思わない日だったのに。
生まれた日を大事に過ごしたいと思うのは…
やっぱり愛しい女のおかげなのだな。