第4章 【世にも淫猥な御伽草子】赤ずきんver.
「蒼い瞳のオオカミが出るの?」
「ああ、だから心配なんだ。お前が喰われたりしたら大変だろ?」
「大丈夫だよ、秀吉お母さん。寄り道しないで、まっすぐ行ってくるから」
「お前がそう言うなら…本当に気をつけてな」
すると、秀吉お母さんは赤ずきん美依に聞こえないように、ぼそっと呟きました。
「本当だったら俺が喰いたくて、でも我慢して一生懸命見守ってたんだからな、くそっ」
あれ?秀吉様はお母様役ですよね?
何故、赤ずきん美依様を喰うなどと……
三成、大人の事情だ(ずばん)
これは『淫猥な御伽草子』という事を忘れるな。
先に進めろ、貴様はいちいち私情を挟みすぎる。
ああ、申し訳ありません、信長様!
では、物語を先に進めますね。
────こうして、過保護すぎるお母さんに見送られ
赤ずきん美依は、家康おばあさんの家に向かいました。
さて、蒼い瞳のオオカミに狙われず、無事にケーキとワインを届ける事が出来るのでしょうか?
*****
家康おばあさんの家は、森を抜けた先にあります。
その森は、もちろん噂のオオカミが出る森です。
赤ずきん美依がちょうど森に差し掛かった頃…
森の木の上では、噂の蒼い瞳のオオカミが、暇を持て余しておりました。
「暇だな、なんかいい獲物は居ねぇかな…そろそろ女の肌も恋しくなってきたし、誰か夜伽の相手を……って、ん?」
その時、木の下をちょうど赤ずきん美依が通りかかりました。
その姿を見て、オオカミは目を見開きます。
白い肌、くりっと大きな黒い瞳に、桜色の唇。
その愛らしい赤ずきんの姿に……
オオカミは、一目惚れをしてしまいました。
「すげぇ可愛いな、よし…あの女にしよう」
ひらりと、軽い身のこなしで木から降りたオオカミ。
そして、そのまま赤ずきん美依に声を掛けました。
赤ずきん美依はびっくりして目を見開きます。
秀吉お母さんの言っていた通り、蒼い瞳のオオカミが本当に居たからです。
しかも──……
青灰色のふさふさした耳に、尾っぽ。
どちらかと言えば『獣人』に近い、そのイケメンオオカミに、なんか可愛いなぁとすら思ったのでした。