第32章 〖誕生記念〗蛍火、恋空に瞬け / 伊達政宗
「俺に口づけられるの好きな事、知ってる。とろっとろになるからな、お前」
「……っ、うん」
「知ってるか、俺明日誕生日なんだよ」
「そんなの当たり前だよ!」
「そうか、だったら……」
指を滑らせ、唇をなぞる。
さすれば、美依の喉が鳴って……
ああ、期待してる。
そんな風に思って、嬉しくなった。
俺はそのまま耳元に唇を寄せ、美依に直接甘い言葉を注ぐ。
それは『誘惑』と『本音』。
俺が今までずっと抱えていた──……
赤裸々な感情を。
「心も躰も俺のものになれよ。口づけられなかった数日間、俺がどれだけ我慢したと思う?お前に触れたくて、気が狂いそうだった。誕生日の贈り物に、お前を寄越せ。抱かれろよ……な?」
瞬間、美依の耳たぶまで赤くなる。
あーあ、恥ずかしがってるな。
そう思っても、発言は撤回しないけど。
すると、美依は少し俯いて…
消え入りそうな小さな声で尋ねてきた。
「でも政宗…面倒くさがらない?」
「何を」
「私、そのっ…あまり経験がなくて」
「お前見てれば、そんな事は解る。俺色に染められるなんて、こんな嬉しい事はねぇよ」
「ほ、ほんと……?」
「ああ、光栄だ」
俺が答えれば、美依はほっとしたような表情になり、ようやく首を縦に振った。
やっと聞けた『合意』の返事。
俺は嬉しくて、心が浮ついて…
再度美依を抱き締め、唇を塞いだ。
気持ち良さそうに受け入れる美依。
数日間触れられなかった間を埋めるように…
俺は、その温もりを存分に堪能した。
────ああ、今度こそ全て俺のものだ
もどかしい日々もようやく終わり。
恋仲として、また距離が縮まった気がした。
もう、絶対朝まで離さねぇ。
誕生日の朝起きたら、愛する女が居るなんて…
それこそ死ぬほど幸せだ。
淡く仄めきながら、蛍が舞う。
それは求愛の証拠だから。
俺も蛍のように、お前を求める。
そして、蜜なる時間を過ごすのだと……
甘い時間に思いを馳せながら、その小さな身体を力一杯抱き締めたのだった。
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