第32章 〖誕生記念〗蛍火、恋空に瞬け / 伊達政宗
「私、政宗に口づけられると変になるの」
「え……?」
「頭がぼーっとして、ふわふわして、自分じゃないみたいで…」
「……」
「口づけられると自分が蕩けるの解るの。そんな表情は政宗だけが知っていればいい、他の人には見せたくない…!」
切々と紡がれる言葉。
美依の唇から語られた真実。
それは、何とも愛らしく、純粋で…
────ますます、俺を虜にさせる熱情だ
「口づけ禁止なんて言ってごめんなさい。政宗の口づけ、嫌じゃないよ、むしろ好きだよ。本当はたくさん口づけてほしい、もっと私を…愛してほしい。本当に、政宗を愛してるから………」
キラキラ、キラキラキラ…
蛍が光って、俺達を鮮やかに映し出す。
まるで、心が晒されるように、
真紅の想いが、堪えきれずに溢れていく。
(ああもう、なんだこいつ)
可愛すぎるのもいい加減にしろ。
その可愛さは底抜けか?
あんまり煽られると、止まらなくなる。
えげつない感情が芽生えて…
めちゃくちゃにしてしまいそうになる。
「んっ……!」
俺は美依の顎を掬い、そのまま噛み付くように口づけた。
すぐさま唇を割り、逃げる舌を絡め取って。
上顎をくすぐり、歯列をなぞり、吐息まで奪うように深く深く唇を重ねる。
その甘い味は久しぶりだった。
この柔さも、湿った温もりも。
そして…次第に蕩け始める顔も。
「美依……」
「まさむ、んっ…ぁ……」
名前を呼んで、角度を変えて、また塞ぐ。
僅かに出来た隙間からは、甘い吐息が漏れ…
それが耳に入る度に、ぞわりと腰が疼いた。
駄目だ、本当に止まらねぇ。
もっと口づけたい、ぐずぐずになるくらいまで。
気持ち良さで、トロトロに蕩けるまで。
気持ちいいことしたい、美依と。
我慢していた感情が、堰を切ったように溢れてしまって、どうしようもなく身体が熱くなった。
ちゅっ…
上唇と下唇を軽く吸って離すと、美依はもう崩れそうな表情になっていた。
ああ、いい顔、堪んねぇ。
俺は美依の頬を指の背で撫でながら…
余裕のあるように、不敵に笑みを作ってみせた。