第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「泣くほど良かった?」
「……っ」
「蜜は甘いのに、涙は塩辛いな」
「ばかっ……」
くすくすと可笑しそうに笑うから、何だか悔しくて堪らない。
でも、こうして幸せな時間を過ごしていても。
幸村は、明日は戦に行くんだ。
しばらく、離れなきゃいけないんだ。
(寂しいし、やっぱり辛いな)
星に『怪我をしませんように』とお願いしても…やっぱり不安は残ってしまう。
戦とは命の奪い合いなのだから。
幸村だって、命を奪うかもしれない。
逆に、奪われる可能性もある。
血が…たくさん流れるかもしれないんだ。
「……」
「美依、どーした?」
黙った私に、幸村が不思議そうに尋ねる。
行かないで、なんて言えない。
生きる為に、甘ったれた事は言えない。
でも…ついて行く訳にもいかない。
私───………
幸村を守る為に、何か出来ないのかな。
「幸…ちょっと座って」
「……おー」
幸村が躰を起こしたと同時に私も起き上って、胡座を搔いた幸村を真正面で見つめた。
躰にはたくさんの傷跡。
乱世を生きてきた…証なんだ。
私はそれを指でそーっとなぞり…
そして、その傷の傍にちゅうっと唇で吸い付いた。
「……美依?」
「お願い、じっとしてて」
「……っ」
古い傷跡のすぐ側に、場違いな赤い華が咲く。
私は次々にその跡をなぞって…
そして、唇でたくさんの華を咲かせていった。
『私は貴方のものだよ』
『無事に帰って来てね』
『私を忘れないで』
そんな想いを込める。
幸村がこの傷跡を見た時に…
私の存在を思い出せるように。
待ってる人が居るってことを。
幸村が…幸村らしくいられるように。
────貴方には、私がいるよ
「どーしたんだよ、お前。普段はこんな事しねぇくせに」
「……だめ?」
「…っだめじゃねー、ただ……」
「わっ……」
脇腹に口づけを落としていたら、脇の下に手を入れられ、持ち上げられた。
そのまま、私を膝に座らせる。
私は幸村の躰を跨いで座る格好になり…
間近で幸村の顔をみれば、なんだか拗ねたような可愛い顔をしていた。